鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.009 〜凍み豆腐〜
 
平成25年王祇祭上座世帯持ち 上野勇さん(黒川地区)

2月1日から鶴岡市黒川地区で王祇祭が行われました。
500年もの歴史をもつ黒川能が奉納されるこの祭りでは、別名「豆腐まつり」とも呼ばれるほど多くの豆腐が食されます。鶴岡の冬の風物詩として取り上げられる「豆腐焼き」の場を訪ねました。
雪と風が激しく吹きつけ、天地の境界さえさだまらない吹雪がおこる1月18日、
7-8台の車が縦列に並び、外から見ても人々の賑わいが見てとれるお宅がありました。
こちらは、今年の上座の「当屋」を務める方のお宅です。
その敷地には、2つの作業小屋があり、人々が忙しく行き交っています。
この日は、黒川地区で恒例の豆腐焼きが始まり、これから3日間、約7000個の豆腐が焼かれます。

黒川地区では、上座と下座の2つの組に分かれ、競いつつも力を合わせながら、王祇祭が行われます。
それぞれの座には毎年「当屋」と呼ばれる長老宅が選ばれ、王祇祭にまつわる複雑な行事が行われます。
そして「世帯持ち」と呼ばれる実行委員のような役回りの方々(男性2人女性2人)が責任をもって、それぞれの行事の段取りをされていきます。

 

上野勇さんは、平成25年上座の「世帯持ち」を担当されています。
今回で3度目の「世帯持ち」となることは、任された責任と誇りを感じるそうです。


鶴岡の冬の風物詩 豆腐焼き

特製の大きな囲炉裏には、薪がくべられ、燃え盛る炎の周囲に人々が座し、隙間なく豆腐の串を並べていきます。人々は帽子や布で顔や頭を覆い、ダンボールで防護面を作り、思い思いに熱を避ける工夫が施されています。

10数人から20人の人々が囲炉裏を囲んで座り、火に面した向かい側の豆腐に絶えず目を配り、長い竹竿で指し示して、焼き具合を指示します。
豆腐の側にいる焼き手からは、豆腐の焼き具合が見えないため、向かい側にいる人が、教えてあげるのです。
「こんなも!」
「はいよ」
「まっぐろになって」
「あっりゃあ」
と楽しい掛け声が上がり、周囲に笑いの輪が広がります。

囲炉裏端の白く見える箇所は、豆腐を作るときに出たおからが使われています。適度な湿り気と柔軟性をもつおからは、熱で乾燥してもしまるため、豆腐の串を固定するために重要な役割を果たしています。

3日間行われる上座の豆腐焼き。1日の終わりには、灰がすべて取り除かれ、新たにおからが塗りなおされ、翌日の豆腐焼きに備えます。



しめ縄にあるしで(紙垂)は、その名のとおり紙。真下に薪の火が燃え盛るにも関わらず、しでは燃えたことがない。と集落の皆さんは口々にお話されます。

 

王祇祭は、神様のため。準備のいたるところにも神様とともにあるようです。



豆腐が焼きあがるまで

豆腐は、奉納された大豆から作られます。豆腐焼き用の豆腐は櫛がささりやすいよう、かなり固めに仕上げられた特大の豆腐です。
以前は大豆から豆腐への行程も、うちば(地区)の人の手で行われていたのですが、今年は業者に注文して作ってもらっていました。
豆腐は18等分し、一つ一つに櫛をうち、先ほどの囲炉裏で一つ一つ焼きます。
焼いた豆腐はさらに2等分し、雪が降りしきる屋外で保管されます。
以前は、すだれの上に豆腐を置き、屋外で凍らせていましたが、温暖化のため、豆腐が凍らない年もあり、近年は冷凍庫で凍らせて凍み豆腐を作っています。

世帯持ちの重要な仕事として、二番汁作りがあります。上座と下座で料理法が異なり、上座の二番汁とは、薄味の味噌で煮たあつあつの豆腐とごぼうを特性のしょうゆだれで食べる料理です。
作り方は、、出来上がった凍み豆腐を常温に戻し、味噌を溶いた汁で煮ます。
たれは、しょうゆと酒を合わせて囲炉裏の隅で煮、くるみ、あぶった板のり、山椒の順に加えてできあがりです。
その他に上野さんの秘伝の工夫を加えて仕上げるそうです。

自分も健康でいずれ長老となり、王祇様を家に迎え入れたい

「合力(ごうりき)」とは、当屋にあたったお宅を親戚や集落みんなで助け合うシステムです。王祇祭では、当屋にあたったお宅の集落は、祭りの接待役として、他の集落の方々をもてなします。
また、その当屋を手伝うために訪れた集落内の人々も当屋が用意した昼夕の食事や酒、菓子などのふるまいを受け準備を進めていきます。
手伝いに来てくれた集落の人々をもてなし、そしてすべての準備を滞りなく終えることが上野さんをはじめとする世帯持ちの役目なのです。


王祇祭では、散髪に行き、身なりを整え、紺色の着物を身にまとい、他の集落のみなさんをもてなします。
左の写真は、王祇祭での若衆(わかしゅう)。(ろうそくに塩を載せ、ろうが垂れないようにしています)

 

「今年の王祇祭も滞りなく終わってよかった。

昔から言われてきたことだけど、黒川のせがれに生まれた限りは、健康でいずれ長老となり、王祇様を家に迎えいれたい(当屋にあたりたい)。
20代30代の時にはそんなこと考えもしなかったけど、今になってそう思う。」


いつでも全力で王祇祭の準備、接待にあたっていた上野さん。
その真剣な眼差しが印象的でした。

凍み豆腐

うちば(地区)の人の手で焼かれた豆腐は、王祇祭のためのもの。
同じものではないけれど、黒川の凍み豆腐を食してみたいなら、以下のお店でどうぞ。
調理済みのものや味付けをしていない凍み豆腐を販売されています

収穫時期

王祇祭のための豆腐焼きが行われるのは、1月中旬


買えるところ  食料品 みやざき
TEL 0235-57-2246

おすすめの食べ方

俺の作った二番汁はおいしいよ。と上野さん。
上野さんならではの秘伝の工夫があるそうです。
豆腐はあつあつを出し、たれは小皿に入れて豆腐にたれをつけながらいただく。
こだわりをもって作られ、出されている二番汁は、王祇祭のごちそうの一つです。


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