鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.015 〜早田ウリ〜
 
早田ウリ保存会 会長 本間治廣(じこう)さん(早田地区)

海辺に沿って細長い集落が広がる早田では、ずっと食べられてきた在来作物の早田ウリが住民の自慢の一つです。栽培する人が少なくなった早田ウリを守り、知ってもらいたいと有志の人たちが動き始めました。

強い日差しが照りつけ、暑さでめまいがするような8月14日。早田ウリ保存会の圃場に伺いました。
この会の会長を務める本間治廣さんは、早田で生まれ育ち、米づくりを主体にした農業を営まれています。
 
「本間さん」と声をかけると、
「早田には(家が)134軒あるけど、そのうち約8割が本間なんだ」といたすらっぽく教えてくれました。
 
海のすぐ傍にある圃場は、金属パイプの骨組みに細かなネットが貼られ、厳重な装備。
これは、カラス、ハクビシンなどの鳥獣害防止のためのものです。
 

「昔は畑に直に種を撒いて収穫していたけど、最近は収穫が難しいのう」と治廣さんは嘆きます。
近年、動物たちが早田ウリのおいしさを知ってしまい、ネットなしでは実を荒らされてしまうのです。

むかしむかしの早田ウリ

昔の早田地区の男性たちの仕事は大きく3つに分かれ、漁師、農家、そして出稼ぎでした。
主に北海道へ出稼ぎする人が多かったため、春から秋にかけて男性たちは不在となり、早田ウリは主に女性たちの手で栽培されました。
 
しかも、海辺のすぐそばに山が迫るこの地では、平らな場所は豆や小豆など食べるために重要な作物たちが優先して植えられ、山の斜面や焼き畑の2年目の畑※で早田ウリは栽培されました。(※杉を伐採後、山を焼き、畑として利用します。1年目はカブ、2年目に早田ウリを植え、3年目には植林をします。)
収穫した早田ウリは近くの海水浴場で振り売りされました。海水浴客に早田ウリを売り、小遣いを稼いだそうです。
 
治廣さんも子供の頃、お母さんが早田ウリを栽培されていました。ジュースもアイスクリームもない時代には、甘みのある早田ウリが嗜好品でした。「子供のころ、海に早田ウリを抱えて仲間と遊びに行き、早田ウリでひとしきりキャッチボールをしてその後、ウリを膝や岩にぶつけて割って、仲間と腹を満たしたんだ」と懐かしそうに語ってくれました。
 

最近は心配で、夜中に目が覚めると眠れない

会長を務める治廣さんの最近の悩み事は、週末に行われる2件の収穫体験。
8月の初めまで続いた激しい長雨の影響で、早田ウリの生育状況が悪く、おいしいウリが収穫できないのでは?と夜もなかなか眠れないほど心配なさっているご様子。
 
「おいしいウリを食べてもらわないと次につながらないでしょ。」
 
多くの人に甘い早田ウリを味わってもらい、ファンになってほしいと考えています。
 
そのために、早田ウリを植えつけるだけじゃなく、つるの剪定、追肥や敷き草などこまめな手入れを欠かしません。

始めた限りは続けていきたい

無事イベントを終えた治廣さんにお話を伺うと
 「やっとゆっくりする」
 
とほっとしたご様子でした。
 
写真は、早田ウリについて参加者に語る治廣さん。
 
昔、畑作業をしながら喉をうるおした早田ウリは鎌でみかんのように皮をむいて食べていました。サービス精神旺盛な治廣さんは講演時に新品の鎌で実演なさっていました。
 
「始めましたけど止めましたでは恥ずかしい話でしょ。なんとか始めた限りは続けていきたい。早田ウリの種をつなぎ、保存会の活動を続けていきたい。そのためにも活動の意義を見つけていきたい」 と語ります。
時折見えるはにかんだ笑顔と早田ウリについて真剣に語ってくださる丁寧な口ぶりが心に残りました。

最後に・・・
昔は、早田ウリ以外にも、シマウリ、地ウリなどもおやつとして食べていたとか。
治廣さんにどんな味?と聞いて興味をひいたのは、地ウリのお答え。
「とにかくモタモタする。うまぐねぇなー。」
と味にはいろんな表現があるけれど、モタモタとは?うーん気になります。

早田ウリ

かぼちゃのような形に、やや銀色に光る皮肌。
断面は花型となる可憐なウリです。その反面、山の斜面で栽培され、山からかごで背負って海水浴場まで運んで売りに行く・・・昔は相当な重労働を要する作物でした。
味わいは、治廣さんの言葉を借りると「ゆっくり味がする」。近年の強い甘みの果実とは異なる素朴さが魅力です。

収穫時期



8月半ばから約10日間  

買えるところ  道の駅「あつみ」しゃりん
TEL 0235-44-3211
 
※ 少人数で栽培されている早田ウリは収穫時期でも常時販売されておりません。幸運にも見かけたらぜひ手に取ってみてくださいね。

おすすめの食べ方

冷蔵庫がない昔は考えられなかったけれど、冷やして食べるのがおすすめです。
でも、暑い日に畑で食べた生ぬるい早田ウリも格別に美味しかったです!
治廣さんは、「皮を厚く剥いて、実を4等分し、まず種を口に含んで果汁を味わい、種を捨て、果肉を味わってほしい」そうです。
じんわりやさしい甘みとたっぷりの果汁は、暑い夏にぴったりですよ。
 
 

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