鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.017 〜シイタケ〜
 
鈴木農園 鈴木昭一さん 由美子さん(温海地区)

10月の終わりともなると、鶴岡は秋真っ盛り。秋といえば、山の恵みのキノコもおいしい季節。店先には、数々のキノコが並びます。今回は、全国的にもトップブランドを誇るシイタケ栽培農家さんを訪ねました。
海沿いにある温海地区ですが、山の方に向かって車を走らせると、山間に遮光が施されたシイタケ栽培のハウスが見えてきます。
 
ハウスの中は、日中でも薄暗く、秋の屋外とさほど変わらない温度でしたが、地面は濡れ、じわっと湿度が感じられます。棚には袋に入れられた菌床が並び、肉厚なシイタケがびっしり生えています。ずんぐりと丸いシイタケはどこか愛嬌があり、思わず触りたくなる程でした。
(写真撮影用に、昭一さんがハウス内の照明をつけてくれました。)

栽培されているのは、鈴木昭一さん。
お父さんが早くに亡くなり、若くして経営を引き継ぐことになった昭一さんは、シイタケ栽培を始めて42年になります。当初は木にシイタケ菌を植え付ける原木栽培だけでしたが、平成8年に菌床シイタケ栽培に主体を移し、現在では10棟もの菌床栽培ハウスを持つまでになりました。
昭一さんが栽培を、奥様の由美子さんが収穫したシイタケの選別を担当し、その他に7名の方の手によって栽培から出荷まで行われています。

菌床シイタケとは、ナラなどの木材チップに、米ぬか、ふすま(麦ぬか)、コーンブラン(コーンスターチの残り、皮)、貝殻の粉などを入れた培地にシイタケの菌を植え付けて栽培したものを言います。
この培地は販売もされていますが、昭一さんは経験や研修をもとにより良い配合を調整し、自ら培地を作成しています。
原木シイタケに比べて菌床シイタケは効率よく栽培することができ、また栽培方法によっては、品質の良いシイタケをより多く栽培することも可能なのです。
原木シイタケが1-2度収穫できるのに対し、菌床シイタケは一つの培地から10-15回収穫することができるのです。


需要にこたえる量と質を保つことは簡単じゃない

写真は築地市場に出荷されるシイタケです。
形や色合いに細心の注意を払い、鮮度保持のため発泡スチロールの箱に詰められています。
品質がいいものは他所からも市場に出るそうですが、一定の品質のものをほぼ毎回、まとめた量で出荷し続けることがトップブランドとして信頼を得る秘訣です。
 
今後の目標について伺うとご夫妻そろっておっしゃいました。
 
「需要にこたえられるだけの量と質を保つこと。目標だねぇ。本当に簡単じゃない。」
 
「簡単じゃないんですよ。1日に20-30キロの時もあるし、400キロ取れるときもあるし・・・。」

おいしいって喜んでもらえるとうれしい

昭一さんは品質の高いシイタケを栽培するための勉強も欠かしません。
 
「研修会はほとんど行きます。いいものを一つでも見つければ、どんなに遠くても(行く)価値があります。自分のやっていることの確認する意味もあるんです。(研修会には)専門的な知識をもっている人がいっぱいいるからね。宴会がいいんですよ(笑)。アルコールが入るとみんな教えてくれるし、こっちも相手の悩みがあれば話すしね。」
「いいものをとるのは簡単じゃない。みんなと同じようにしてたら経営が成り立たない。うちは97パーセントがしいたけ生産で成り立っているから。」
由美子さんも
「シイタケ栽培農家の奥さんたちが集まるランチ会が楽しい。ここは離れているから、自分から行かないとなかなか交流できないし、この中の情報しかなくなってしまうんで、雑談でも、いい時間です(笑)。」
 
お二人とも人とのつながりを大事にされていました。
 
栽培の喜びや魅力はなんでしょう?
 
昭一さん
「ロマンティストじゃないから、やっぱりシイタケが(高値で)評価されるとうれしい。
この干しシイタケが需要が多くて。かみさんが工夫したんだ。袋だけで立つような容器にしたり、パッケージも色が引き立つように工夫して、需要が追い付かないくらい売れている。それにおいしいって喜んでもらえるとうれしい。」
 
由美子さん
「うちのシイタケしか食べないから違いは分からないけど、シイタケ嫌いな人も食べてくれる。新鮮だからかな?シイタケ嫌いな子供に喜んで食べてもらえるとうれしいよの。子供は正直だし。」


鉢花をしてみたい、実験をしてみたい

今後の夢は?
昭一さんは、「かみさんとは違うけど・・・」とちらりと由美子さんを見ながら
「早くバトンタッチして隠居したい。(息子さんが後を継ぎたいと栽培を手伝われています)一年中休みのない生活なんですよ。お正月とかでも1日1回は収穫しないといけない。私は21才からずーっと経営者。高校時代日本一周したから、引退したら世界一周したいけど、できないでしょ?年も取ったし金もないから(笑)
高校の頃は急いで周ったから、今度は、かみさんとのんびり日本一周したいな」
 
その後にはこんな言葉も
「シイタケを育て終えた培地は腐葉土と同じ。ずっと鉢花を勉強してきたから、廃棄する培地を利用して鉢花をやってみたいな。」
 
また、由美子さんは
「家を直すために今は頑張っているの。家が直ったらいろいろ試してみたいの。瓶詰とか加工とか個人的な実験をしてみたい。開発した商品を直接お客さんの顔を見ながら販売してみたい。」
 
お二人ともアイディアや夢が具体的に描かれ、日々の忙しさの中にも一歩一歩前向きに目標を実現しようと努力されている姿勢を感じ、お話を伺いながらこちらまで胸が浮き立つようでした。
 
下の写真は、夕方に収穫されたシイタケ。軽トラックの荷台はシイタケのかごでいっぱいでした。
 


シイタケ

豊富な地下水で栽培された肉厚なシイタケからは、独特の芳香が漂い、口にしなくとも美味しさが伝わるようです。
鶴岡では、芋煮やカラトリ芋の味噌煮など秋の郷土料理にかかせない食材の一つです。



収穫時期

通年

買えるところ  鈴木農園
TEL 0235-44-3259
 
森の産直カー あつみ号
(鶴岡市内を月・金曜運行、
冬場は金曜のみ)
TEL 0235-44-3211

おすすめの食べ方

由美子さんのおすすめは「焼き」。塩やしょうゆをかけて焼くと一番美味しさが分かりやすいそうです。また、シーチキンとマヨネーズを合わせたものをかさの裏面に盛って焼くとお弁当のおかずにもオードブルにもなっておいしいそうですよ。

 
 


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