鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.019 〜小真木大根〜
 
小真木大根農家 齋藤小枝(さえ)さん(鶴岡地区)

日本海に面する鶴岡は、11月から12月にかけて天候が不安定となり、時折暴風と雷雨に見舞われます。次第に雨はアラレ、雪へと変わり本格的な冬へと向かっていきます。この少々手荒い季節も鶴岡の美味しい食材を育む大切な要素。
今回はおせち料理に欠かせない小真木大根を作る農家さんを訪ねました。
  
市街地に程近い小真木地区は、住宅街を抜けると田畑が広がる平野部に位置します。
この集落にある齋藤小枝さんのお宅にお邪魔しました。小枝さんは生まれも育ちも小真木地区。嫁ぐずっと前から小真木大根の栽培に関わってきました。
栽培は誰から教わったの?との問いに
「小っちぇ頃から見てきたすけ、特別は・・・。」と笑われました。





時代に応じて、変わる形

この大根は大正時代以前から小真木地区で栽培されてきたといわれる在来作物です。
小枝さんの記憶でも、小枝さんのお祖母さんくらいまでは栽培に関わっていたそうです。
その昔、小真木大根はたくあん漬けの原料として大ぶりなものが愛され、小枝さんのお母さんは近くの温泉場へ漬物を漬けに出かけて、大根を買ってもらっていました。


その後、漬物の需要がなくなり、少し前には辛み大根として生食用に販売されたこともありましたがこれも次第に生産されなくなりました。
ここ20年では、はりはり大根の原料として利用されるようになり、細く長いものが好まれ、小枝さんもそういった大根が育つよう栽培や種の採取に心がけています。
 
小真木大根はカリカリと食感がよく、生食だと辛みが強いですが、干すと甘味と旨みが増し、漬物やはりはり大根にぴったりの食材なのです。
 

小真木大根ができるまで

9月初旬に種をまき10月に間引きをします。間引きの感覚はおよそ7-10センチ。この幅が大きすぎると太い大根になってしまうとのこと。

 大根は作業しやすい分だけ収穫し、1本ずつ水洗い、皮むきをして、大根に穴をあけ、ワラを通し、二つずつまとめて天日干しします。
完全に干し上がったら、なっていたワラをほぐし、出荷用に大根の大きさをそろえて10本の束にまとめてまたワラをない直します。

(左の写真は干したばかりの小真木大根、右の写真は10本ずつまとめてなわれたワラ)
 
素早く泥を洗い落とすために片手に軍手をしてたわし代わりにしたり、大根に適当な穴を通すため傘の骨組を加工して針を作ったり、小枝さんは効率よく作業を進める工夫を随所にこらします。
極めつけはワラの扱い。小枝さんの手にかかるとワラはワイヤーのように美しくあるべき形に整っていくのです。
  
「今年は雨降ったども、風あるろ、警報が出るほど強かったから、よぐ干ったのう。天気いい年でも風なければ〈大根が〉かぶれるわけ(カビがはえる)」
小枝さんは小真木大根の一番のポイントは風だと語ります。
  
大根は11月の初めから12月にかけてじっくり乾燥させます。
「本当は軒下さ干す。じじちゃんも年取ったさけ、ハウスにばっかり干す。」
ご高齢の小枝さんのお宅ではビニールハウスの中に小真木大根を干しています。
その数7000本!
小真木地区では、今も小真木大根を栽培するお宅が10軒近くあり、軒下にずらりと並ぶ光景はとても美しいものです。

やっぱり2人いねばのう

左の写真は手前がご主人、奥が小枝さん

85歳のご主人と78歳の小枝さんは、ほぼ二人三脚で小真木大根の収穫と加工を行っています。
「〈自分かご主人か〉誰か一人欠ければ一人ではされねえろう。おらい(私の家)だっていつまで続くかと思って。おれ(私)まだされるたって〈相手を〉たがいでも来らいねば(持ってこられなければ)、引っぱても来らいねば、やっぱり二人いねばのう。」
 
小枝さんはさらに言葉を続けます。
「もっと続けてえども。でも歳なんだ、限度なんだや。限度。あと今年のうちから来年どうなるかなと考えたら、寝っ時夜ごと寝られなくなる。(笑)あの人が元気でなきゃ。容易でねえ。」
想像以上に手間のかかる小真木大根は一人で加工するのは難しくパートナーあっての作業。この年まで二人で働けると小枝さんは感謝も口にしていました。
 
「まんず動かれるだけ続けねばねえと思ってるちゃや。して、人からも買ってもらったりありがてえしの。欲でのう。1本何でも売れたらうれしい。」

細くて長い姿が好ましい小真木大根ですが、時には大きな太い大根もとれます。
そんな大根は、縦に6つ切や8つ切にして干し、自家用として小枝さんのお宅で消費します。
今年は6キロの小真木大根をはりはり大根にして、親戚やお世話になった人に送るそうです。
大根の出荷を終えた小枝さんですが、まだまだ慌ただしい年末が続きます。
 
 
 
(イラスト:Inada akino)
 


小真木大根

11月から12月にかけて葉をつけたままの大根が軒下に並ぶ。規則的に並ぶ緑と白の色彩が美しい。なんといってもカリカリとした歯ごたえが魅力。いろんな食感が楽しめるはりはり大根にぴったりです。

収穫時期

大根の収穫は11月。
乾燥したものが販売されるので、市場に出回るのは12月初旬。

買えるところ  JA鶴岡 産直館
産直館白山店 等 3店舗 

TEL 0235-25-6665
※12月初旬から小真木大根を販売
 
株式会社 本長

TEL 0235-33-2023
※はりはり大根を販売

おすすめの食べ方

小枝さんのおすすめは「はりはり大根」。「作り方はじょさねえ(簡単だ)」そう。
おいしく作るポイントは「細っこくはやす(切る)こと」と「水、醤油、砂糖、酒を煮立たせた調味液を必ず冷ましてから大根を合わせること」
 


 
 


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