鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.020 〜行者ニンニク〜
 
行者ニンニク促成栽培農家 佐藤多文さん(朝日地区)

今年は例年に比べ、驚く程雪が少ない鶴岡です。とはいえ、市内でも有数の積雪量を誇る朝日地区ではあたり一面雪に覆われ、生き物の気配が感じられません。
そんな中、朝日で山菜の行者にんにくが栽培されていると聞き、農家さんを訪ねました。




1月20日、市街地から朝日地区へと車を走らせると、徐々に山が近くなり、そしてみるみる雪深くなっていきます。積み上げられた雪の高さに驚くものの、主要道路は除雪がきっちりと行われ、意外にもスムースに目的地にたどり着きました。
待ち合わせ場所で、行者にんにく栽培農家の佐藤多文さんが出迎えてくれました。
  
この日は多文さんが所属する朝日山菜栽培研究会での圃場巡回。
会員の生産者の方々が管理する圃場を有志のメンバーで見て回ります。
  
車で圃場へ行く道すがら、多文さんのお名前の由来を尋ねると、祖父・父と代々、「多」の名前を受け継いできたとのこと。
「変な名前を付けられてしまって」と照れ笑いしながら教えてくれました。
  
(下の写真は2013年4月に訪れた時の多文さん)

行者ニンニクって何?

外は氷点下。しかし、ハウスの中は意外にも快適で、寒さで力んでいた肩がふっと柔らぐ暖かさ。中に入ってまず目に飛び込んでくるのは生命力あふれる青々とした行者ニンニクです。

行者ニンニクは山間部に自生し、雪が溶けるとすぐに芽を出すので春一番を告げる山菜と言われています。
この変わった名は、山篭りの行者が食べたからだとか、逆にこれを食べると滋養がつきすぎて修行にならないから食すことを禁じられていたとか諸説あるようです。
  
栽培法について多文さんに伺いました。

行者ニンニクの栽培方法と出荷

山菜である行者ニンニクはゆっくりゆっくり育ちます。
種まきから収穫まで8年!栽培法はイラストのとおり。
山菜なのであまり手がかからないイメージでしたが、休眠等植物の生理的なシステムを利用して促成栽培するため、細かい温度管理が施されます。
多文さんは行者ニンニクのみで農業経営をされています。当初は、稲作でしたが徐々に切り替えて30年。研究会の中でも行者ニンニク栽培の先駆者のお一人で、マニュアルのない中、メンバーと共に少しずつ栽培技術を向上させてきました。
朝日地区は、行者ニンニク促成栽培の技術を全国でもいち早く積み上げ、流通商品として出荷するようになりました。東京の太田市場ではトップシェアを誇ります。


出荷のためには1本1本水洗いし、根を切り、外皮を取り除きます。
出荷作業は1日がかりで、そのうち半分がこの水洗い作業に費やされます。
ハウスの中は温かいとはいえ、外は氷点下。
多文さんは「水仕事は辛くて泣きたくなる」と冗談めかしておっしゃってました。
奥様と二人で50gずつパック詰めし、多い日には約300パック以上出荷しています。
 

朝日山菜栽培研究会

さて、圃場巡回ですが、その日に回った圃場は多文さんのハウスを含めて3軒。
メンバーの皆さんは、ハウス内や冷蔵庫、行者ニンニクを丹念に見ながら、質問が飛び交い、圃場主は丁寧に答えていきます。より品質の良いものを栽培するため、部会のメンバーで栽培技術を共有します。皆さんこの後の反省会を兼ねた新年会も楽しみにされているようで、終始なごやかでした。
 
(写真は、圃場巡回時の山菜部会のメンバーと多文さん(右から1番目))


我慢だなや(我慢なんだよ)

多文さんは冬にできる仕事を求めて、当時タラの芽の促成栽培をしていた朝日山菜栽培研究会に入ります。
そこで価格のいい行者ニンニクを知り、手がけてみることにしました。
栽培を始めて収穫できるまでの8年間、行者ニンニクの収入はありません。
8年後の収穫を頼みに、毎年種をまき、徐々に水田の面積を減らしていきました。
  
「8年間収入ゼロだろ?収穫ない時期を何年後にはお金になるんだっていう希望だけでやる。我慢だなや。」
  
多文さんは8年間の歳月を「我慢」と表現します。
今年も多分さんの「我慢」が実を結び、茎が赤く色づいた美しい行者ニンニクが成長していました。この茎の色づきは、生まれ持った系統と朝日の昼夜の厳しい寒暖差によるものです。
  
栽培法は今もって改良中で、現在、茎の赤い発色がよりいい優良品種を栽培することが多文さんの目下の目標です。
 

行者ニンニク

8年もかけて育った香り高い行者ニンニク。山菜にしてはあくがなく油炒めや生でそのままいただけます。一足早い春を味わってみてはいかがですか?

収穫時期

 12-4月 
※促成栽培のもの
買えるところ  鶴岡協同の家 こぴあ 
TEL 0235-25-5005
 
主婦の店 パル店
TEL 0235-29-7522
 
※両店とも収穫時期でも常時販売されていないこともありますので、幸運にも見かけた際はぜひ手に取ってみて下さいね。

おすすめの食べ方

多文さんのおすすめは、ベーコンとの炒めたもの。行者ニンニク独特の香りが引き立ち食欲がそそります。他に生のままで味噌マヨネーズをつけて食べるのもおいしいそうですよ。

 
 


行者ニンニク味噌。研究会のメンバーの方のお手製です。隠し味は月山ワイン。ニンニク風味がたまりません!

ページトップ

鶴岡食文化創造都市推進協議会

事務局 ● 鶴岡市企画部 食文化創造都市推進課 〒997-8601 山形県鶴岡市馬場町9-25
TEL . 0235-35-1185 FAX . 0235-25-2990
お問い合わせフォーム

© Tsuruoka Creative City of Gastronomy Promotion Committee. All Rights Reserved.