鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.024 〜月山筍(がっさんだけ)前篇〜
 
佐藤農園代表 佐藤俊一さん

月山筍(前篇)

「月山筍」は、柔らかい白い身、シャキシャキとした歯ざわり、そして豊かな風味を持つたけのことして、初夏の一瞬だけ楽しめる山からの贈り物です。この「月山筍」を羽黒町手向地区で20年以上前から栽培してきた佐藤農園代表、佐藤俊一さんにお話を伺いました。




 月山筍は、別名ネマガリダケ、チシマザサと言い高山性の笹で、主に北海道や東北地方から鳥取県までの日本海沿岸の山地に分布しています。
 
「きちんと手入れをしないと美味しい筍はとれねなやの。」佐藤さんはいいます。
 
 自生する月山筍は、月山の雪解けが始まる6月に入ってから、月山9合目より上に登り採ってきます。それまでは、5月初旬になると月山1合目にある佐藤さんのたけのこ畑で栽培した筍を出荷します。
 
 佐藤さんは、今から20年以上前に、当時羽黒町にあった数軒の農家が月山からとってきた月山筍を5株ずつ役場から分けてもらい栽培を始めました。
しかし、今のように一定量収穫できるようになったのはここ10年くらいのことです。自生する月山筍の味の良さを作るために、土を作り、元気な若竹を残し、地下茎を張らせるまでに数年はかかったといいます。
 

高さ2〜3メートルはある笹薮の中に入り、よく見ると綺麗に下刈りされた枯笹の中から「月山筍」が顔を出しています。「この腐葉土が大事なんだの。」と佐藤さん。
 
 たけのこは竹の地下茎にある節からでた芽のところをいい、土の質や含水量、日当りや風当たりが生育に大きく影響します。 この笹薮の微妙な日当り加減は佐藤さんが、剪定をしてあげるからこそ得られるのもです。

顔を出す月山筍
1センチぐらい出た頃が一番美味しい時期です。
 


そっと手を入れて
そっと地中に手を入れて折りとると、根元の皮が赤紫色で、身が真っ白な筍がとれます。
 

雪が積もるからこそ美味しく育つ月山筍

 じつは、月山筍のチシマザサの節は積雪と大きく関係しています。 この節が冬には雪の下になることで、寒さや乾燥から新芽が守られるのです。
 
 またチシマサザの節はもともと斜めにでており、弾力性があるので、雪で潰されても折れることはなく、雪が解けるともとに戻ります。つまり雪があるからこそ、枯れずに育つということです。
 
 そして月山の夏まで残る雪と長年積み重なってきた腐葉土が、美味しい月山筍を育てます。

 同じ月山山系のネマガリダケであっても、皮の色は採れる場所により異なります。この赤紫色の他に緑や黄緑、黄色など様々あります。
 
 また、山人の間では収穫場所や販売場所などが暗黙のルールで決まっており、山の秩序を守っています。
 

お山に感謝していただく

 たけのこは鮮度が落ちやすく、収穫には特に気を使うといいます。 天然ものはえぐみがでないように、たけのこを雪で包んだ状態にちて山を降りるそうです。
 栽培ものは、採りながらクーラーボックスに入れて常に採れたての状態にしておきます。
 
 佐藤さんにとって一番美味しい食べ方は何ですかと聞くと、 皮を剥かずに先に包丁をを入れて、炭火またはレンジで焼いたものだとか。あとは、お味噌とあぶらあげ(厚揚げ)のたけのこ汁だそうです。手向地区のたけのこ汁は月山筍の風味を生かすために、酒かすを入れないそうです。

6月10日過ぎになったら、いよいよ、月山に入り、一度に30〜40キロの月山筍を採取してくるという佐藤さん。 信仰の山として、人々の暮しに深く関わってきた月山。その山の恵に感謝していただきたいと佐藤さんはいいます。
 

 
(文・写真 俵谷敦子)

月山筍(がっさんだけ)

シャキシャキの歯ざわりと独特の甘みを持つ「月山筍」は、たけのこ特有のえぐみもなく、風味の良さから全国的にも知られる食材の一つです。中でも根元の皮が赤紫色のものは、味も格別と人気があります。


販売
時期
5月初旬〜7月初旬
買えるところ 佐藤農園 

鶴岡市羽黒町手向字百目木73-21

TEL FAX 0235-62-4122

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