鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.028 〜甲州ブドウ〜
 
甲州ブドウ栽培農家 佐久間一良さん

江戸時代から始まっていたブドウ栽培

鶴岡市櫛引西荒屋地区では現在、約60品種の生食用のブドウが栽培されています。この地区でのブドウの栽培は、およそ250年前に甲州ブドウに始まったと言われています。今回はこの甲州ブドウを今も栽培している佐久間一良さんを訪ねました。



佐久間さんは、ブドウの他に米、梨、林檎、サクランボを作っています。この西荒屋地区には現在、ブドウを栽培している農家は50軒ほどあるとか。この季節になると、毎朝近くの産直あぐりに、近所の農家の人たちが次々にブドウをはじめさまざまな果物を出荷します。

西荒屋地区における甲州ブドウ栽培の歴史

甲州ブドウの歴史をひも解くのに先ず、西荒屋地区にある河内神社を訪れました。境内の片すみに大きな石碑があります(写真左下)。これに書いてある内容がよくわかるようにと、産直あぐりの隣にある西荒屋公民館(西荒屋地区農林魚家・婦人活動促進施設)にある掛け軸を見せてもらいました(写真右下)。
 

河内神社

 
 

それによると、庄内藩士の水野氏が江戸から入手した甲州ブドウの苗を西荒屋の佐藤方珍氏に授けました。それを佐久間久兵衛氏が繁殖に努め、明治10年には鶴岡、酒田のみならず、北海道にも出荷されるようになりました。ところが、明治18年頃に病害虫が蔓延し、畑は壊滅状態となってしまいました。そこへ山形県の浅田岩吉氏の指導や組合の設立により産地が復興したといいます。
  
大正時代には当時の皇太子殿下などにお買い上げいただくほどの品質を誇るまでになりました。 それまでの歴史を顕彰するために、この『葡萄圃復興記念碑』が建てられたそうです。
 


その後もさらなる品質向上に取り組み、平成15年には秋篠宮家に献上しています。

甲州ブドウは小粒ですが、房長はおよそ20センチもあります。
一粒食べてみると、さっぱりした甘さとバランスのよい酸味があります。
 

櫛引地区でブドウをはじめ、果樹栽培が盛んなのは、海に面した庄内でも山あいに近く、昼と夜の寒暖の差が大きく果樹栽培に適した気候であることがあげられます。 そしてこの西荒屋地区はもともと水田に不向きな保水性の悪い砂利が多い土地であったそうです。
 
ブドウ畑の片すみに木箱が積み上げられていました。この木箱に収穫した甲州ブドウを入れ、家屋の北側の涼しいところで保管すると数ヶ月も保存ができ、昔は真冬に炬燵に入りながらブドウを食べていたとか。そしてお雛様にもブドウをお供えしていました。長い期間貯蔵できるのはこの甲州ブドウの保水性の良いという特徴でもあるそうです。
現在は冷蔵庫で保管していますが、今もこの木箱を使う農家は少なくなったと佐久間さんはいいます。
 


ブドウ畑の片すみに積み上げられている木箱

ウィンク


  

瀬戸ジャイアンツ

 

マニュキアフィンガー

 
最近は、種がなく皮ごと食べられる大粒のブドウが人気があります。甲州ブドウに比べ、これらのブドウは栽培に手間もかかりますが、値段も高く売れるため、年々大粒ブドウを作るブドウ農家が増えて、反対に甲州ブドウを栽培する農家が年々減ってきていると佐久間さんは話してくれました。

雨避けのかかったブドウ畑に入ると甘い香りが漂い、日差しが心地よい。
 
 西荒屋の甲州ブドウを原料にしたワイン『ソレイユルバン甲州シュール・リー』(月山ワイン山ぶどう研究所)が平成26年8月に国産ワインコンクールで金賞を受賞しました。

 

甲州ブドウの良さをもう一度見直して欲しい

甲州ブドウはもともと、生食用として栽培されてきましたが、最近は大粒ブドウの人気に押され、年々栽培面積が減ってきています。現在は、生食用の他に月山ワインの原料として出荷しています。
甲州ブドウの酸味と甘みのバランスは絶妙で、保存も効くので、もう一度生食としての甲州ブドウの良さを皆さんにも見直して欲しいと佐久間さんはおっしゃっていました。
 
  
 
(文・写真 俵谷敦子)

甲州ブドウ

西荒屋地区の甲州ブドウは、250年以上栽培され、皇室にも何度か献上されている。
  
近年は、大粒の皮ごと食べられる品種が消費者に人気があり、甲州ブドウは生食より、ワインの原料として栽培されることが多くなっている。この甲州ブドウを原料にしたワイン「ソレイユルバン甲州シュール・リー」(月山ワイン山ぶどう研究所)が国産ワインコンクールで金賞を受賞している。
 


販売
時期 

 


甲州ブドウ 10月上旬 
 
月山ワイン甲州シュール・リー 通年
買えるところ 産直 あぐり
 
〒997-0332
山形県鶴岡市西荒屋字杉下106-3
 
TEL 0235-57-3300
 
FAX   0235-57-4243
 
営業時間 
9:00 〜 18:00
(冬期間 17:00 まで) 

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