鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.030 〜紅エビ〜
 
鼠ヶ関港漁師 佐藤洋生さん

庄内浜は全国でも5本の指に入るエビの一大産地

庄内では「甘エビ」のことを女性の唇に紅を塗ったさまに色形が似ている事から「紅エビ」と呼びます。実は庄内浜は全国でも5本の指に入るエビの一大産地。しかし、そのほとんどが県外に出荷されています。今回は、鼠ケ関でこの「紅エビ」漁を行っている佐藤洋生さんにお話を伺いました。


佐藤さんは鼠ケ関で底引き網漁をしている二代目漁師さん。漁師歴は20年になります。「紅エビ」の他、タラやハタハタも捕ります。佐藤さんは毎年ゴールデンウィークに開催される「鼠ヶ関大漁旗フェスティバル」の実行委員長としても活躍しています。このお祭りを通して鼠ヶ関で獲れる多種多様の魚を皆さんに知って欲しいといいます。また鼠ヶ関漁業青年会長として若手漁師たちをまとめています。

底引き網漁

〈写真提供 佐藤洋生さん〉

「紅エビ」はトロール船、つまり底引き網漁で捕れます。底引き網漁とは、袋状の網を船の進行移動によって海底を引き回す漁法です。この時期はまだ暗い夜中の2時に出航する佐藤さん。夕方の競りに間に合うように戻ってきます。この時期は暗くなってから戻ることも多いとか。



「紅エビ」の標準和名は「ホッコクアカエビ」といいます。水深300m付近の海底の大変きれいな海洋深層水域に生息し、7・8月を除く通年底引き網で漁獲されます。非常に甘みがつよく刺身で食べるのが美味しいです。


「紅エビ」は、2〜4年でまず雄として成熟し、その後5年半くらいで雌に性転換します。「紅エビ」の特徴でもある赤みは、海水面に引き揚げられた時の温度で決まります。海水面の温度が低ければ低いほど鮮度が維持されるため、赤い色が濃いままで引きあげられます。

 

鼠ケ関での「紅エビ」は、水揚げされてその日の午後5時半から競りが始まります。ここで競り落とされた海の幸は、夜のうちに消費地に運ばれ、次の日の朝には新鮮な「紅エビ」が山形県内はもちろん、県外の市場へ届き、スーパーや魚屋さんの開店と同時に店頭に並びます。


沖詰表示シール
箱詰めされると、箱にはどの船が捕ったかが表示され、さらに沖で詰められたことを示す「沖詰」シールも貼られています。

「船内海水殺菌シール」
鼠ヶ関の漁船には海上衛生管理システムが積まれており、その殺菌装置を通すことで海水に含まれる色々な菌を除菌できるといいます。その海水で、捕れた魚をすぐに洗って、身を締め、鮮度を維持したまま1時間以内に箱詰めするといいます。「紅エビ」もこの方法で、きれいに箱詰めされての水揚げされます。
 

〈写真提供 佐藤洋生さん〉

船上できれいに箱詰めされた「紅エビ」は、漁港に着くと直ぐに競りに。秋から冬にかけては1日80箱〜100箱も捕れるとか。佐藤さんに一番美味しい「紅エビ」の食べ方は?と聞くと、「エビだけでなくて、捕れたての魚介類を船の上で味噌汁にして食べる“漁師のまかない鍋”は最高だよの」と嬉しそうに答えてくれました。


大洋丸と佐藤さん

ここ庄内で捕れる美味しい魚介類を県内の人にもっと食べてもらいたい。

鼠ケ関で競り落とされた「紅エビ」のほとんどが、エビの一大消費地である金沢や、新潟、東京などの大きな市場に出荷されるため、2割程度しか県内には残らないそうです。もっと、山形県内、特に内陸地方の人に県内で捕れた美味しい魚介類をもっと食べて欲しいと佐藤さんは思っています。

新鮮な紅エビをじっくり時間をかけて乾燥させた一品ができました。

紅エビの色も形もそのままに
ビールにもお酒にも。おやつにも美味しい。

サックリ紅エビ
新鮮な紅エビをそのまま無添加でじっくり時間をかけて乾燥させた一品。

(文・写真 俵谷敦子)

紅エビ

紅エビは甘エビとも呼ばれ、肉はやわらかく、甘みが強いので刺身やすし種として馴染みが深いエビです。ナンバンエビとも呼ばれますが、庄内では女性の唇に紅を塗ったような色形から「紅エビ」と名付けられています。

獲れる
時期 

通年(7月〜8月の禁漁期間を除く)

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