鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.034 〜うるい〜
 
うるい栽培農家 丸山良治さん

ひと足早い春の味覚、ハウスで栽培される「促成うるい」

庄内ではまだ雪のあるうちから一足早く春の訪れを告げるうるいが出回ります。うるいの白と黄緑の美しい色のグラデーションは、まるで雪がとけて若葉が萌える春の訪れを表しているようです。今回は、うるい栽培農家の丸山良治さんにお話を伺いました。

山形県は日本一のうるいの出荷量

うるいはもともと湿地に自生する山菜ですが、山形県では冬場の農閑期の収入源として「促成栽培」されています。「促成」とはビニールハウスで暖房器具などを使って保湿や加温を行い、露地での栽培よりも成長や収穫、出荷を早める栽培方法のことを言います。山形県のうるいの出荷量は147トンで67%と断然トップを占めています。(2010年調べ)

鶴岡市羽黒地区で稲作している丸山良治さんは農家の仕事をして40年。稲作をしていない冬場、10年前から「プチヴェール」、そして5年前からこの「うるい」を栽培しています。「うるい」の栽培のきっかけは、近所で「うるい」を10年前から栽培している丸山吉郎さんに栽培方法など聞いて自分もやってみようと思ったからだそうです。

 
早速、丸山良治さんのビニールハウスに連れて行ってもらいました。外はまだ色のない季節ですが、ハウスの中はプチヴェールの濃い緑とうるいの淡い緑が一瞬にして春を連れてきたように出迎えてくれます。まず、驚いたのはうるいの根元をみると土ではなく一面籾殻なのです。この籾殻、実は適度な湿度と温度を保つのに効果的であるといいます。



うるいは、株で増やします。株を養成する畑の管理と、伏せ込み(温床に株をならべて、籾殻をかけ、暖かくして成長させること)の温度管理が重要になります。
丸山さんは、11月に露地から株を掘り出して、12月頃までハウスの外に置きっぱなしにすることで、うるいを一旦休眠させます。そしてお正月明けにハウスの中に株を入れて、伏せ込みをして発芽を促します。
うるいの株はハウスに入れる前に2年ほど、株を大きく成長させるために露地栽培します。


株で増やすうるい

うるいの株

うるいの株を見せてもらいました。 株はどんどん成長します。成長した株はいくつかに分けてまた露地で成長させます。

 

伏せ床に株を並べ、籾殻を入れる作業も実は重労働だと丸山さんは言います。

うるいの収穫は一本一本丁寧に籾殻の中に手を入れて根元を断ち切ります。籾殻の中から真っ白な茎が現れます。

温度管理は大切

伏せ込みの温度管理は重要。その日の天候や気温に合わせて10~15℃に保つように気をつけます。籾殻は適度な湿度と温度を保のに効果的なうえ、稲作農家にはコスト面でも有り難いそうです。


庄内地方で山菜を栽培している生産者で構成する「庄内促成山菜生産者協議会」があり、そこでは「うるい」の他に、「こごめ」「たらの芽」「行者にんにく」など、規格を決めて出荷しています。丸山さんもこの規格に沿って出荷しています。

 

丸山さんのうるいの収穫は2月20日頃から始まり、3月20日までには終了し、その後は米の苗の準備に入ります。

 

丸山さんおすすめのうるいの食べ方は、酢みそ和え、天ぷら、生姜醤油だそうです。

自分からはなかなか話せない後継者問題

昔は冬の農閑期に出稼ぎに行っていましたが、冬場ハウスを利用した促成栽培ができるようになったお陰でその必要がなくなり、子どもと離れないで暮らすことができたのは何よりでした。しかし、農家における後継者問題は深刻だと丸山さんは言います。
「自分にも息子がいますが、息子には好きなことをさせているため、今は農業をしていないし、親子でゆっくり話合う時間もお互いとれないでいるなやの。んでも、自分も年をとってきて、息子にも子どもができたので、少しずつ今後のことも話しあう時間がとれたらいいんだがの。」数ヶ月前にお孫さんが誕生し、今は里帰りしているお孫さんと早く一緒に暮らせるのが楽しみだと優しい笑顔で話してくれました。

 

 

(文・写真 俵谷敦子)

うるい(オオバギボウシ)

正式名称はオオバギボウシ。山菜の中でもアクが少なく、ビタミンCが豊富で、野菜のように食べられます。春先にでてくる自生のうるいは緑色も濃く少しクセがありますが、促成栽培されているうるいは、瑞々しくしゃきしゃきとした歯ごたえや軽いぬめり、甘みが特徴です。

販売
時期



2月~3月末

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