鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.053 〜干し柿・柿の葉茶〜

エヌ・Kファーム 佐藤京子さん

 庄内地方には、季節ごとのたくさんの食材が楽しめる地域です。その中で、“庄内”と名前についている食材はそう多くはありません。たくさんある秋の味覚として、まず上がるのが庄内柿です。庄内柿は、赤く景色に溶け込み、眼にもおいしい庄内平野の秋を代表する風物詩の一つです。庄内柿は明治18年に酒井調良が苗木を育成し、普及させ、広まっていきました。平べったく、種がないのが特徴で、渋柿のため渋抜きをしてからでないと食べることができません。また、生食の場合は特別に保存しない限り1週間から10日程度でやわらかくなってしまうため、長期保存には不向きです。そんな庄内柿の保存方法の一つに干し柿があります。庄内柿の本場、鶴岡市羽黒町で柿加工品の生産に取り組んでいるエヌ・Kファームの佐藤京子さんにお話をお聞きしました。

佐藤京子さん

長持ちしない干し柿を保存する伝統

 今回、まず案内された事務所で、柿の葉茶を出していただきました。「柿の葉茶はとっても体にいい成分が入っていて、美容と血圧の安定に効果があるのよ。」そう話してくれたのはエヌ・Kファームの代表の佐藤京子さん。京子さんは、毎日の日課で朝に柿の葉茶を淹れてポットに入れておき、常に飲めるようにしているそうです。出していただいた柿の葉茶は身近にある他のお茶とは似ているものがない風味で、甘味とほんのり苦味が印象的な明るい色のお茶です。「熟れた柿のようなやさしい色ですね。」というと、「淹れたばかりはもう少し薄い色なんだけど、時間がたつと濃くなるのよ。」と教えてくれました。
この柿の葉茶は、ビタミンとカキタンニンを多く含んでおり、健康を気にする方なら注目したいお茶の一つです。エヌ・Kファームでは、この柿の葉茶も商品の一つとして販売しています。「元々、自宅用として飲んでたんども、3年くらい前から商品にして販売するようになったなやの。」京子さんと共に、旦那さんの憲夫さんも柿加工品の製造に携わっています。憲夫さんは主に生産現場を担っていますが、忙しいときは両方の仕事をしながらお互いにまわしているのだそうです。

使いやすいパック仕様にしている

柿の葉茶の販売のきっかけは、国による6次産業化の動きの中で、やまがた食産業クラスター協議会での商品づくりでした。それまであまり注目されていなかった柿の葉茶ですが、まだ庄内では未開拓の素材の一つとして商品化に取り組みました。果樹というと、どうしても消毒による影響が気になりますが、エヌ・Kファームは特別栽培のエコファーマーの認定を受けており、極力消毒を控えて栽培しているほか、柿の葉茶に関しては一番初めの夏の消毒前の“萌(もえ)”と呼ばれる新芽の部分だけを手摘みして乾燥、袋詰めをして商品にしています。現在、この柿の葉茶は東京のアンテナショップや県内の産直施設、サービスエリアなどで手にすることができます。

旦那さんの憲夫さんと二人三脚

 エヌ・Kファームが一番忙しくなるのが10月末から1月の柿の最盛期です。多いときは10人前後のパートさんが入り、干し柿づくりの作業に加え、出荷の作業もあるので休む暇はないそうです。干し柿の販売は15年ほど前からスタートしましたが、5年前に地元デザイナーにパッケージデザインをしてもらい、現在の形になりました。特に、首都圏での販売の際、デザインが目を引くよさがある、とおっしゃっています。

手に取りやすいデザイン

大量の干し柿が圧巻

作業は、9月初旬の柿もぎからスタートします。ヘタをきれいに整え、電動皮むき器で皮をむきます。18~19個ずつ紐に取り付け、ビニールハウスの中で約2週間干します。乾燥が進み、色が変わってきたころに別の部屋にうつし4~5日管理しながら仕上げ乾燥をします。干しの作業が完了したら、仕上げです。紐から一つずつ丁寧にはずし、干し柿を美しくする糖分を表面に浮き出させる作業をします。家庭用や少量であれば、たわしなどで表面にやさしい傷をつけるという方法もありますが、エヌ・Kファームでは相当の量なので、柿もみ機という機械で干し柿の表面に傷をつけます。この、丁寧に傷をつけるという工程を経た干し柿は白く、粉砂糖をまとったような姿になり、高級和菓子顔負けの上品な見た目になります。糖分が浮いてくるということは、甘さの証拠でもあると言われており、その昔、砂糖が高価な時代にはそぎ落として砂糖の代用にしたという話もあるほどです。この作業のあと、干し柿は手作業で成形され、白くなるのを待ちパック詰めされます。 

「パートさんは柿の形が一個一個違うから皮むきの作業が面白いよ、という人が多いなやの~」と二人は話します。


地域の特産品をよりいろんな人に手に取ってもらえるように

 庄内柿は、柿の育たない北海道が主力の販売地でした。現在も生産量の半分以上は北海道へ送られています。しかし、生柿の生産量は年々減少傾向にあり、消費量の減少と共に生産者の高齢化なども要因になっています。
 佐藤さんの周辺でも、柿の生産をやめる農家も多くなっていて、柿は特に農産物の中でも重量があり年を取ってくると大変なのだそうです。エヌ・Kファームでも、やめる人の畑も借りながら、現在400本の柿を育て、干し柿づくりに取り組んでいます。数にして1800コンテナ。コンテナ1つあたり130~150個の柿が入るので25万個ほどの柿を扱っていることになります。「さすがにこれ以上は大変でふやせねぇの~」と話していました。

柿を好きな人が増えてほしい

干し柿は年配の方が好むイメージだけど若い人にも手に取ってもらいたい、と佐藤さんは言います。最近では、柿が縁起物と言われる台湾からの観光客も増えており、干し柿をお土産に手に取っていく姿も目立つようになってきました。干し柿を加工してデザートへ応用する人も多いですが、工夫しないと熱を加えただけで渋みが戻ってしまうためなかなか大変だと話していました。

美しい柿のカーテン

強めの甘みが自慢の庄内柿。長く楽しめるように干し柿や柿の葉茶を佐藤さんたちは作り続けています。加工しない、純粋に果物だけの甘さで体もうれしくなります。最近では、季節を問わない食材を希望する方も多くなっています。一年中干し柿を楽しめるようにふるさとの味を受け継いでいきたい、そんな思いが、佐藤さんご夫妻から伝わってきました。
(文・写真 稲田瑛乃)

干し柿

干し柿は柿の果実を乾燥させた食品。干し柿に用いられる柿は、そのままでは食べられない渋柿であり、乾燥させることにより、渋柿の可溶性のタンニン(カキタンニン、シブオール)が不溶性に変わって(渋抜きがされて)渋味がなくなり、甘味が強く感じられるようになる。甘柿は渋柿と違って渋抜きをせずに食べられるが、糖度そのものは渋柿のほうがはるかに高いため、甘柿を干し柿にしても渋柿ほどには甘くならない。
表面に白い粉が付着していることが多いが、これは柿の実の糖分が結晶化したものである。主にマニトール、ブドウ糖、果糖、ショ糖からなる。日本ではかつてこれを集めて砂糖の代用とし、中国ではこれを「柿霜」(しそう)と呼んで生薬とした。

庄内柿は、平べったい角型で種がない柿。鶴岡の秋を代表する果実。

お問合せ先

エヌ・Kファーム株式会社
〒997-0141 山形県鶴岡市羽黒町大字荒川字白山67
TEL/FAX:0235-62-3424
E-mail:yaemon@paw.hi-ho.ne.jp

 
 

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