鶴岡の食文化を紡ぐ人々
No.013 〜古代もち〜
古代もち作り手 佐藤キヨ子さん(山五十川地区)
けれどヤマブドウは春にも楽しみがあるそうです。その楽しみを探りに、山五十川(やまいらがわ)の古代餅の作り手を訪ねました。



昔の馬屋を改装してできた加工所は、暑い日差しを遮り、風が吹き抜ける、とても気持ちの良い空間でした。
この加工所ができたのは、今から10年ほど前ですが、古代もちは30年前くらいから作り続けてこられたそうです。
古代もちの昔話

古代もちは、あんことじゃがいもと山ぶどうの葉、よもぎ、もち米、砂糖などからできています。
昔、食べ物が少なかった頃、「しなもち」と呼ばれ、家々で食べられていました。
「しな」とは、割れた米や未成熟な米など質の悪いうるち米のことで、これにさらにじゃがいもや山ぶどうの葉、ごぼうの葉などをいれて食べ物のかさ増しをしたおもちを日常食としていました。
佐藤さん曰く「食べて美味しいものじゃなかった」そうです。
当時、砂糖は大変な貴重品だったため、味付けに安価な塩を入れたり、甘味を補うために干し柿を入れたりすることもありました。
佐藤さんの小さな頃は、手のひらにほんの少しの砂糖を載せてもらうことがご褒美だったそうです。
次第に食べられなくなった「しなもち」をなんとか復活させたいと佐藤さんが工夫して今の「古代もち」ができたのです。この名は佐藤さんのご主人が命名されたそうです。
「古代もち」の作り方

ヤマブドウの若葉の白いふわふわした繊維が多いことが、もちのこしの決め手です。
佐藤さんは、新芽の出る6月に山に入り1年分収穫します。
ヤマブドウは木に絡みついて成長するため、木によじ登って採取することもあるそうです。
よもぎも佐藤さんや知人の方が手で摘み取ったものを使います。
もち米、じゃがいもや小豆も佐藤さんの畑で作られています。


スギではなく、クリ、ナラ、ブナなど雑木の灰が好ましいのです。佐藤さんは必ず灰水をなめて舌で苦みを確認しながら、濃度を調整していきます。
灰は冬にストーブで使って出たものを取りおきして利用しています。
薪を燃やして暖を取り、出た灰も山菜などのアク抜きや保存食づくりとして利用する昔ながらの暮らしが佐藤さんのお宅には息づいています。
ものを作って売って、お客さんが喜んでくれたらおもっし

佐藤さんの人生のさまざまな辛苦についても話題にのぼり、
「生きていかなければいけないのだから、がんばねばの!」
「やらねば分からねえ。失敗は成功の素。」
と笑顔でおっしゃる姿はとても心強く温かなものでした。
「ものを作って売って、お客さんが喜んでくれたらおもっし(面白い)。お客さんと話したりするのが楽しい。 」
「山菜採りは楽しみだっちゃ。(胸に手をあてながら)生えていくところ見ると胸が騒ぐ。」
人生を楽しまれている佐藤さんにしなやかな強さを感じました。
古代もち

ヤマブドウ葉とヨモギの2種のおもちがあります。
食べ物が少なかった時代を生き抜いた先人の知恵を今に伝える貴重な味です。
飢えをしのぐための料理だった「しなもち」は砂糖を加えるなど佐藤さんの工夫によっておいしく復活しました。
11月23日には山五十川歌舞伎が行われ、その時には飛ぶように古代もちが売れていくそうです。
収穫時期 |
販売時期:通年 |
買えるところ | 道の駅「あつみ」 しゃりん
毎日販売されていません。 |
おすすめの食べ方
そのままお召し上がり下さい。
ある人曰く「もちがとぅるん、とぅるん」です
ジャガイモがもちに入っているのでちょっと変わった風合いが楽しめます。
佐藤さんは、春は月桂樹、秋は紅葉した紅葉の葉などちょっとした季節のものとともに販売されています。
