鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.075 ゆらまちっく海鮮レディース

         代表 和田光子さん 

 白山島を背に大漁船が戻ってくると、由良の港はにわかに活気づきます。港で待つ女性たちは水揚げされた魚を手際よく仕分けしていきます。浜のおかあさんたちの集まり「ゆらまちっく海鮮レディース」代表の和田光子さんにお話を伺いました。


ゆらまちっく海鮮レディース(この日活動していた4名)

 日本海の豊富な魚介類により古くから漁業が盛んな由良地域。362世帯833人(2024年2月末現在)が暮らします。由良地域では、由良自治会、由良温泉観光協会、山形県漁業協同組合由良総括支所、山形県漁業協同組合由良水産加工場、由良漁業者会、山形県漁協同組合女性由良支部、鶴岡市農山漁村振興課からなる「ゆらまちっく戦略会議」を2009年に発足し、地域づくりに取り組んできました。また、女性による活動グループとして、2011年「ゆらまちっく海鮮レディース」が設立されました。

黄色いエプロンと可愛い鯛のアップリケがほどこされた三角巾がトレードマークの「ゆらまちっく海鮮レディース」では、漁師家族や漁業関係者の8名が会員として活動しています。


由良地域

もっと魚を好きになってもらいたい

 「ゆらまちっく海鮮レディース」のこれまでの活動の柱の一つとして、由良の魚を使った料理教室があります。設立当初、NHK文化センター(現 庄内文化センター)から年4回の料理教室を依頼され、四季折々の魚を使った講座を由良コミュニティセンターの調理室で行ってきました。参加者は、6070代が主ですが、中には若い人たちや男性もいて、魚を知りたいという人たちが集まります。その後も女性センターや学校などいろいろな所で料理教室を行ってきました。「魚って皆さん、難しいものだと思っているけど、基本のさばき方と料理の仕方がわかると難しいものではないですよ」と光子さんはいいます。

 

料理教室(写真提供:ゆらまちっく海鮮レディース)

 「庄内浜で捕れる魚をもっと皆さんに知ってもらい、もっと好きになってほしい」という思いは、5年もの時間をかけて「魚図鑑と浜料理『浜のごっつぉ』」という冊子になりました。この冊子では、庄内浜で捕れる魚と浜料理について日本語と英語で紹介しています。また浜文化を紹介するコラムも掲載されています。魚のおろし方や料理のレシピはもちろん、こんなにもたくさんの種類の魚介類が庄内浜で捕れることに驚きます。

※この本については「ゆらまちっく戦略会議」のホームページをご覧ください。 

 

浜のごっつぉ


未利用魚を活用した商品開発

 「市場では扱われない、少し傷ついた魚や価格の低い魚を、親戚・近所・友人に配る文化が由良にあるといいます。魚の命を無駄にすることなくいただくのです。「ゆらまちっく海鮮レディース」では、この市場では値が付かない未利用魚の商品開発に取り組んできました。

体長15cmほどの小鯛(チダイ)は、昔から由良地域では焼き干しにして保存し、だしを取り大切に使われてきました。それを活かした「小鯛だし」を2016(平成27)年に完成させました。

  この日も、由良コミュニティセンターに隣接する「海テラスゆら磯の風」の2階にメンバー4名が集まりました。手際よく小鯛の内臓を取り、焼き加減を確認しながら焼いていきます。焼きあがった小鯛の目玉を一つずつ外します。そして、専用の機械で粉砕し、何度も丁寧にふるいにかけて、最後に小さな袋に梱包します。すべて手作業で添加物もない、天然小鯛だしの完成です。市内のスーパーや道の駅などで購入できます。また、小鯛だしを使ったレシピも「ゆらまちっく戦略会議」のホームページで紹介しています。


 それにしても皆さん手際がよいことに驚きます。「メンバーが漁業関係者というのは魚を知っている人でないとできないことが多いからの」と光子さん。漁師が捕ってきた魚を1匹たりとも無駄にしないで大切に使うという真剣度が現れています。

 

 最近はラーメン屋さんや業務用の会社から大口の注文が入っているということで、嬉しい悲鳴だとか。この小鯛だしの他にも、市場性の低い小型のタコを味付け煮にして乾燥させた「おつまみ干しだこ」、小鯛だしをうどんに練り込んだ「八乙女うどん」、「鯛だしみそ」、「鯛だししょうゆ『出羽三山“縁”』」を商品開発し販売しています。

 このように「ゆらまちっく海鮮レディース」の活動は、水産加工品の可能性を広げるだけでなく、女性の雇用・活動の場を提供するとともに地域住民が一緒に活動することで、地域の一体感も生みだしています。 


浜の食文化を大切にしていきたい

 「私たちの最終目的はやはり魚を好きになってもらいたいということです。今、若い人たち、子どもたちに魚離れが進んでいるので、ちょっとでも食い止めたいと思います。『この行事にはこの魚を食べてきた』とか、これまで由良で食べられてきたものを失くしたくない。そういう食文化も大切にしていきたいのです。子供だけ集めての料理教室もやってきました。今後もご要望があれば料理教室もどんどんやっていきたいと思っています」。


販売中の開発商品

課題と挑戦

「大口の注文の対応で、今日みたいにひたすら小鯛を焼いて大変なときもありますが、求められることに対して労働力が足りなくなってきているので、メンバーも8名から少し増やしたいと考えています。『漁師家族や漁業関係者』という条件を外さないと地域から人も減っていき該当する人がいないことも課題の一つです。漁業関係者でなければわからないその大変さがわかってないとできないこともあるし、魚の取り扱いに慣れているかそうでないかで仕事の効率も変わってきますから。でも、そんなことを変えていかないといけない時点にきていると思います。これまでも商品開発をしてきましたが、販売して終わりというのではなく、また次に新しいものを開発しないといけないという期待を感じています。常に挑戦させられている感じです。ありがたいプレッシャーですね」と光子さんは笑顔で話してくれました。「ゆらまちっく海鮮レディース」の挑戦はこれからも続きます。 

由良の白山島

2024年2月3日取材 

ゆらまちっく海鮮レディースFacebookページ




未利用魚を使った様々な開発商品

 「おつまみ干しだこ」、「鯛だしみそ」、「鯛だししょうゆ『出羽三山“縁”』」、「八乙女うどん」、「小鯛だし」

ゆらまちっく海鮮レディース

ゆらまちっく戦略会議内

鶴岡市由良2丁目14-53



 
 

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