鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.016 〜そば〜
 
朝日地区そば組合 会長代理 宮崎広和さん(朝日地区)

そばは水田の転作作物として広く栽培されてきましたが、地元のそば屋さんで利用されているのはごくわずか。
現在、そば農家とそば屋のみなさんが一緒になって、地元産そばが地元で食べられるよう試食会やそばのお花見カフェなど様々なイベントが行われています。そばは鶴岡各地域で栽培されていますが、今回は朝日地域を訪ねました。

台風が過ぎ去って、からっと爽やかに晴れた9月20日、水田に囲まれた集落の宮崎さんのお宅に伺いました。

宮崎さんは、通信業の傍ら、そば、庄内柿、月山筍、孟宗筍などを栽培しています。
仕事の合間をぬってお話を聞かせてくださいました。
 
「まずはそばの花を見れ。(見て)」
と周辺にあるそば畑を案内してくれました。
畑には白い可憐な花をつけたそばが一面に広がっていました。
 
朝日地域では山間に水田があり、その中にポツンポツンとモザイクのようにそば畑が点在していました。

そばが溶ける?

そば栽培は、土おこし作業(※1)を5月7月の2度に分けて行い、8月中旬に播種、畑の畦の草刈などを経て10月初めにコンバインで収穫していきます。

※1 右の写真は7月のトラクターで土起こしする様子
 
少しでも良質なそばの収量をあげるため、肥料を多くまきたいところですが、肥料が効きすぎると丈が長くなり、収穫目前で台風が来るとそばが倒伏してしまいます。
倒伏し、さらに水溜りなどができるとそばが腐り、消滅してしまうのです。
このことを宮崎さんは「溶ける」と表現されていました。
溶けるように跡形もなくそばがなくなってしまうんだそうです。
そのため、そばは排水対策が重要で、多くの畑で溝(※そばメモ参照)が掘られていました。
 
また、そばは他花受粉作物(※2)なので、虫が花粉を媒介することで受粉し、実ができるのです。この日も多くの虫がそばの畑を行きかっていました。
 
※2 他花受粉とは、一つの花で受粉することができず虫や風などによって他の花の花粉が運ばれることによって受粉すること。気候の影響を受けやすい。

目標は「親父」

そばは稲作の転作作物として、手がかからないことを理由に栽培を始めましたが、当時、宮崎さんはあまりそばが好きではなく、口にすることはありませんでした。
 
自分の作ったものを食べられないのは寂しいとの想いから、宮崎さんのお父さんは、こっそり近くのそば屋、大梵字さんからそばの打ち方を習い、そばを打ち、宮崎さんにふるまいました。そのそばがとてもおいしく、以来、そばの魅力に引き込まれています。

宮崎さんも、負けじとお父さんに内緒で習い、そばの打ち方を習得しました。
今ではそばの美味しさをみんなに知ってもらいたいとの想いから、そば体験の講師を務めたり、お盆や年末にはそばをうち、親戚、知人にふるまいます。
 
※ 上の写真は、お父さんが手彫りしたそばを打つ用の鉢。残念ながら角のある鉢ではうまく打てないので使わないけれど、思い出深くて大切に保管されています。
 
 
仏壇には見事なそばの花が供えられていました。
 
「立派に咲いたそばの花を見たら親父が喜んでくれる気がする。」
 
目標にしている人はもちろん「親父」。
「親父はどんなに(農作物が)ダメな時でもへこたれず、『来年頑張ろう』が口癖だった。おれも頑張らねばのう」
 

なんとしても自分の手で栽培したい

下の写真は、そばの草丈を確認している様子。今年はまずまずだそうです。
通信業との兼業であるため、米作りは委託していますが、
 
「そばは、なんとしても自分の手でやりたかった」
 
お父さんへの想いとそばへの愛がお話の端々から伝わり、宮崎さんが作るそばが待ち遠しくなりました。
そばのおいしさは、「挽きたて・打ちたて・茹でたて プラス 刈りたて」なんだそうです。
 

そば

そばを愛する人々が作ったそば。
左から、そば粉、むきそば(玄そば)、そばの実(殻つき)。
宮崎さんはより多くの地元の人に味わってほしいと願っています。
鶴岡にお立ち寄りの際にはぜひおそばも召し上がれ。
きっと地元のそば屋さんで地元産のそばを気軽に食べられる日も近いかもしれません。

収穫時期

 10月
買えるところ  産直あさひ・グー
TEL 0235-58-1455
 
※ むきそば(玄そば)、そば粉を販売
食べるところ  大梵字
TEL 0235-53-3413

おすすめの食べ方

 宮崎さんのおすすめは、やはり手打ちそば。どんなに下手でもそばを打って客にふるまうことは最大のもてなしだと。ご家庭でもぜひ打ってみてほしいなと笑ってました。
そばがきもうまいんだよなぁとも。
 
ちなみに写真は大梵字さんの天ぷらそばとそば豆腐です。

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