食文化を紡ぐ人々

No.023 梅津菓子舗 十代目 梅津善一さん

「おきつねはん」や「雛菓子」「切山椒」など城下町鶴岡には、昔から伝わる郷土菓子があります。
今回はその一つの「からからせんべい」を鶴岡で一番古くから作ってきた「梅津菓子舗」十代目主人の梅津善一さんにお話を伺いました。

梅津善一さん

「梅津菓子舗」は元禄時代の創業。日本の駄菓子そのものも、江戸時代に始まったといわれています。武士に許された白砂糖による上菓子に対し、水飴や黒砂糖の甘味を用いた庶民向けの菓子を雑菓子(ぞうがし)と呼んでいました。それが、いつしか安価で素朴な庶民の菓子というイメージから駄菓子と呼ばれるようになりました。
駄菓子の甘さの基本は、干柿の甘さであると言われています。それは果物より甘く、白砂糖より甘くないという甘さ。どこか懐かしくほっとするのは、この甘さが基本だからなのでしょうか。
もともと全国にあった伝統の駄菓子は、戦後にはほとんど姿を消してしまいましたが、鶴岡など東北の城下町には、今なお昔ながらの製法でつくり続けられているお店が残っています。

鶴岡市の中心部からわずかに入った裏路地に、ひっそりとたたずむ「梅津菓子舗」があります。一間ほどのこぢんまりとした店で、ガラガラと引き戸を開けて中に入ると、その店先の木枠のガラスケースには、鶴岡の駄菓子には欠かせない「きつね面」などの打ち菓子や、「からからせんべい」、素朴なあんこ菓子やボーロ、ハッカ菓子や有平糖などが所狭しと並んでいます。


「からからせんべい」は、江戸時代から伝わる鶴岡名物の駄菓子で、当時は「運徳煎餅(うんとくせんべい)」と呼ばれ、お正月の縁起物として売られていました。せんべいが丸いだけでは面白くないので、この丸いせんべいを三方から折り曲げた中に、鉛の兵隊や木の大黒様を入れたのが始まりとか。早速、その貴重な兵隊と大黒様を見せていただきました。手に取ると、ずっしりと重い兵隊さんや大黒様。「今は、鉛の物は危ないから入れないが、当時はこれを入れていただんだよ。」と善一さん。


現在の「からからせんべい」と呼ばれるようになったのは、善一さんが子どもの頃に、山形の食の評論家齋藤仁さんが来て名付けたそうです。
今では、袋に入っているので一年中売っていますが、まだビニールのない昔はこの「からからせんべい」は秋から冬の季節の菓子だったといいます。子どもたちが土遊びをした手で飛びつき、「カラカラ」と振ってみては、あれがいい、これがいいと喜んだので「とびつけ」とも言われていました。
現在は、写真のような小さな御殿まり、おはじきや鈴などが入っています。

先祖代々大切にされてきた焼型

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「梅津菓子舗」の「からからせんべい」は麦粉と砂糖だけで、昔からの製法でひとつひとつ手作りしています。
善一さんにせんべいを約道具を見せていただきました。ずっしりと重い鋳物で、先祖代々大事にされてきた家宝といってもおかしくはないものです。
これを一度に7枚並べ、昔は炭で、今はガスで焼きます。薄いせんべいはあっという間に焼けるので、まだせんべい生地が熱く柔らかいうちにおもちゃを包み、手びねりで素早く封をして和紙をつけます。なつかしくてほっとするここだけの手づくりの味が代々受け継がれています。


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「昔はお菓子屋が60軒あっての、卸屋もあったんだ。需要がそれだけあったんだの。」鶴岡には明治時代から続く、「鶴岡菓子協同組合」がありますが、現時点で新規で入る店はなく、中には後継者がいないため閉店してしまう店もあるそうです。そんな中で「梅津菓子舗」では善一さんの息子さんの善広さんが、今は後継者として善一さんと一緒に作っています。十代目の善一さんは若い頃は市内の他の菓子店で修行に出ていましたが、息子さんは30歳になるまで電子関係のお仕事をされていたとか。「息子には30歳になるまで好きなことをさせたんだ。」と笑いながら話してくれました。


春は「雛菓子」、夏や「焼酎菓子」、お盆には盆棚の周りに下げる「下げ菓子」なども作っています。
店の片隅にあった落雁用の木型があったので、見せていただきました。すると奥から山のような数の木型を出してきてくれました。菓子屋の財産とも言われる木型を、今ではあまり使うこともなくなったそうです。

お菓子が人を繋げる

「どんな人に食べて欲しいですか?」と伺うと、「今来るお客さんは皆年配の方で、昔親に連れられここに買いに来た人たちが、懐かしがって来てくれる。それ以外の人にはなかなかこの店に来るのは難しい。そこで年に一度、鶴岡菓子協同組合が主催する【鶴岡お菓子まつり】に出店している。懐かしくてほっとする郷土菓子の味と伝統を是非皆さんに味わっていただきたい。お菓子が人を繋いでくれたらいいの。」と穏やかな口調で話す善一さんの優しい瞳の中に、今まで繋いできた伝統の味を大切に残していきたいという強い思いを感じずにはいられませんでした。
「梅津菓子舗」のお菓子たち。左上より石衣(いしごろも)、切りパン、からからせんべい、のらくろのぼうろ。

※「からからせべい」は「梅津菓子舗」の他に「菓子の梅安」「宇佐美煎餅店」「大松庵」で製作販売しています。店による味や中身の違いも楽しめます。
「大松庵」では、地元産の酒粕を取り入れた新しい味の「からからせんべい」にも挑戦しています。
(文・写真:俵谷敦子)

からからせんべい

「からからせんべい」は三角形に折り畳んだせんべいの中に、小さな玩具を入れたお菓子です。
開けてみるまで、中に何が入っているかわからないので「カラカラ」と振って音を聞き、わくわくしながらせんべいを選ぶ楽しみは子どもも大人も変わりません。
●販売期間 年中
●買えるところ
梅津菓子舗
鶴岡市本町2-8-16
TEL 0234-22-7348
菓子の梅安
鶴岡市大西町19-4
TEL 0235-22-2147
宇佐美煎餅屋
鶴岡市錦町17-30
TEL 0235-22-0187
大松庵
鶴岡市水沢字行司免43-13
TEL 0235-35-4041

 
 

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