鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.032 〜日本酒〜
 
渡會本店 渡會俊仁さん

「東北の小灘」とまで称された酒のまち大山

米どころ庄内は酒どころとも言われ、現在18軒の酒蔵があります。「東北の小灘」とまで称された酒のまち鶴岡市大山地区では、毎年2月第2土曜日に「大山新酒?酒蔵まつり」が開催されます。今回は、400年近く続いている造り酒屋の渡會本店18代目、渡會俊仁さんにお話を伺いました。

鶴岡市の酒蔵は現在大山に4軒、羽黒に2軒、櫛引に1軒あります。大山にある株式会社渡會本店は、伊勢国度会郡から移住し、元和年間、徳川二代将軍秀忠の頃には、既に酒造りを行っていました。山形県内では、同じ大山地区にある羽根田酒造などに次ぐ4番目に古い酒蔵です。
 
5人兄弟の長男である俊仁さんは、男兄弟が3人もいたので必ず自分が家業を継がなくてはいけないというプレッシャーはなかったといいます。大学卒業後、県外で自動車メーカーに勤めた後、1年間ワーキングホリデーにてオーストラリアで過ごしました。ちょうどその頃、実家から鶴岡に戻るように言われ、25歳で帰郷を決めました。学生時代から社会人でも漕艇の選手であった俊仁さん は、平成4年に開催されるべにばな国体に向け、国体選手として地元での強化練習に参加しました。現在この仕事に就き27年目となる俊仁さん、冬は杜氏として酒づくりや企画を担当し、夏には主に営業の仕事をしています。


新酒が出来上がったことを知らせる「酒林」

早速、渡會本店の中にある「酒の資料館」や酒造りの現場を案内していただきました。資料館の中には、昔の酒造りの道具や古い文献等が多数展示されていて、今では使うことのなくなった道具も沢山あります。
  
日本人にとって、大正時代までは酒といえば殆どが日本酒でした。それが昭和に入り、焼酎やビールも飲まれるようになり、現在ではビールの消費量が一番多く、日本酒の消費は年々減る傾向にあります。鶴岡市の酒の出荷量も減少傾向にありましたが、2010年頃からは増加に転じています。



大山の酒についての記録をみると、江戸時代、鶴岡には145軒もの酒蔵があったのに対して、同時期の大山には42軒ほどしかありませんでした。 それが何故、酒の町といわれるようになったのでしょうか。
 
大山はもともと鶴ヶ城下とは別につくられた城下町で、大工町や鍛治町といった地名が今も町内会名として残されています。江戸時代のはじめの正保4(1647)年、先代の荘内藩主だった酒井忠勝公の7男、忠解公が1万石でこの大山に分家しましたが、寛文8(1669)年に子がないままで没したため、その領地は収公されて、江戸時代末期まで天領となりました。天領では酒造りに対する課税が大名領よりも厳しくなかったことが、酒のまちとして発展した理由の一つとしてあげられています。




創業当初は橘屋と名乗り、志ら雪、八薫、富士正宗という日本酒を造っていました。
幣束
酒造りは神事と深い関わりがあります。幣束の形はそれぞれの工程によって違っています。

かつて使用された機械
資料館には今は使われなくなった機械や道具が多数展示されています。
酒米
庄内では米の民間育種が盛んで、様々な品種が作られました。
 

酒米
現在使われている酒米です。
庄内は、雪国であるため年中豊かな水に恵まれ、稲作も盛んです。「銘醸地に名水あり」というように、月山の山裾にある山際の軟水と鳥海山系海寄りの中硬水に分けられます。大山の水は地下水が浅い層で鉄分が少なく、醗酵に適しているといわれています。また庄内は米の民間育種が盛んで、酒米についても様々な品種が作られてきました。大山では、技術の伝承とともに情熱を持った酒づくりに長年取り組んできたわけです。

海外での日本酒評価と今後の期待

渡會さんは言います。「今の日本酒は斜陽産業であるかもしれないが、必ずもう一度脚光を浴びる時代がやってくると思っています。フランスでワインが輸出の大半を占めるように、自国内での消費が少なくなっても、海外で売れれば、輸出品としての産業が成り立ちます。近年外国人における日本酒の人気が少しずつ高まっています。日本でも近い将来、日本酒が輸出品として注目される時代がやってくるのではないでしょうか。」また、「今、米の価格がどんどん下がっていますが、海外での日本酒の消費量が増えれば、酒米の生産量が増えることになります。日本酒の原料になる酒米は、北の方が作付けにはよいとされているので地元での酒米の生産量が増えることに繋がります。」 2020年の東京オリンピックの開催に向け、日本人だけではなく外国人にも、日本酒の良さをもっともっと発信していきたいと力強く話してくれました。
 

出羽の雪
「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」受賞の大吟醸 出羽ノ雪

和田来
「和田来」は米にこだわるブランド。原料米は単一品種で仕込むという。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」受賞
 

大山新酒・酒蔵まつり

2月14日は「大山新酒・酒蔵まつり」が開催されます。このお祭りは今年で20回目となります。4軒の造り酒蔵を訪ね歩き、蔵出しの新酒や自慢の銘柄が試飲できます。以前は今ほど人も集まらず、せいぜい数百人程度でした。ここ5〜10年で人がどんどん増えました。その理由に以前は2月11日に行っていたのを、第二土曜日の開催に変更したことがあげられます。券の購入方法など、課題はまだまだ沢山あります。地元参加者が大半を占めていますが、今年はインターネットでのチケット販売という新しい方法を導入し、並ばなくても県外の方にも購入できるようにしました。また、日本酒が苦手な方でもカクテルにアレンジすることで 日本酒を飲むきっかけをつくって楽しんでいただけるようにしたりしています。

「大山新酒・酒蔵まつり」http://ooyama-kankou.jp/sakaguram-oouama.html
 
 
(文・写真 俵谷敦子)

日本酒

400年近く続く造り酒蔵。自社酵母と各種の酒造好適米を用い、月山朝日山系の良質の清浄水で醸し出すお酒には定評がある。出羽ノ雪、和田来など。

販売
時期 

年中
 

買えるところ 株式会社 渡會本店
 
〒997-1124
山形県鶴岡市大山二丁目2ー8
 
TEL 0235-33-3262
FAX    0235-33-3368

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