鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.033 〜凍み豆腐〜
 
黒川能の行事食 齋藤美恵さん

「王祇祭」には欠かせない「凍み豆腐」

鶴岡市黒川には室町時代から伝わる国指定重要無形民俗文化財の黒川能があります。毎年2月1日から2日にわたって行われる「王祇祭」で振る舞われる「凍み豆腐」は、祭に欠かせない食の一つです。今回、黒川で農家民宿「権太郎」を営んでいる女将の齋藤美恵さんにお話を伺いました。

黒川能の伝統と歴史

鶴岡市黒川地区では、毎年2月1日から2日にわたって行われる春日神社の「王祇祭」で黒川能が奉納されます。これは、五百年もの間、地元の農民たちの手で受け継がれてきた神事能です。 上座と下座に分かれた約250戸の氏子のうち、それぞれの最長老が暮らす家がその年の当屋となります。神社の依代(よりしろ)である「王祇様」を家に迎えては、酒と精進料理で振る舞いを催し、舞台を張って能を納めます。祭事に関わるすべての仕事は、「世帯持ち」と呼ばれる当屋に頼まれた4名の男女の責任で進められます。食材の準備や豆腐焼きなど一年をかけて準備します。
黒川能についてはこちらをご覧ください。

齋藤美恵さんは、黒川に生まれ、高校を卒業してからずっと専業農家で米づくりをしてきました。幼い頃から黒川で暮らしてきたので、黒川能を中心とする黒川での生活は当たりまえだと美恵さんは言います。
 
農家民宿を始めてから今年で8年目になります。「農家をしていると、旅行に行くことができなかったので、こちらから行けないのなら、逆にこちらに来てもらおうと思った。」と美恵さんは民宿を始めたきっかけを振り返ります。2月1日の「王祇祭」だけでなく、「蝋燭能」にも沢山人が来てくれます。しかし、「蝋燭能」を見た後、市内の方へお客さんが直ぐ移動してしまうので、それでは黒川を訪れた人とゆっくり接することもできません。自分のところに泊まってもらったら、もっと交流ができていいのにと思い始めました。
 
美恵さんのご主人が黒川能の役者であったので、役者の話を聞きたくて泊まっていく人もいました。「黒川の人は皆、普段は無口ですがお酒を飲むと話してくれるんです。地元の役者の人たちが立ち寄り、一緒に話したり、食べたりして互いに交流したのです。」と美恵さん。
 
現在、黒川の農家民宿は4軒あります。能があるときがメインの営業になりますが、最近は、赤川花火大会や釣りや羽黒山に来る人が泊まるようになりました。また、この辺りにお墓参りにきた人が、時代が変わり、市内にある親戚の家に挨拶に行くけれど、泊まるまで甘えられないというので、そういう方が利用してくれています。東京から子どもを連れて来たお父さんが一週間宿泊し、子どもを遊ばせていったこともあります。



農家民宿で食べる伝統の味

美恵さんが、自分の民宿で提供する食事は、季節のものを中心とする昔から食べてきた料理です。ちょうどこの日は、2月1日、2日の「王祇祭」に当屋で出す精進料理を参考にしたメニューを作ってくれました。
 
献立は、凍み豆腐、切り和え、ばんけと舞茸の天ぷら、ぜんまいの煮付け、あさつきとえごの酢みそ和え、人参の白和え、笹巻き、漬物(たくあん、赤蕪の甘酢漬け、はないもときゅうりの粕漬け)、山菜おこわ、かたもち(油で揚げて)です。



凍み豆腐

美恵さんの「凍み豆腐」は上座の味漬けです。「二番汁」と言われるたれは各家庭で違うといいます。材料はにごり酒、醤油、細かく刻んだ胡桃、海苔と山椒です。 「切りごぼう」は、消化をよくするためと言われています。「今日は切ったけれど、本当は15センチと決まっていての、それは割り箸の長さなんだの。」と美恵さんは教えてくれました。

切り和え
 
「切り和え」も上座と下座で違いがあるといいます。上座は、赤コゴミ、胡桃、青豆を味噌で和えます。味噌は昔から地元の櫛引農工連の味噌を使っています。 下座は材料は上座と同じですが、醤油で和えています。この「切り和え」は、「細かければ細かいほどよい」といわれ、水に戻した赤コゴミをひたすらたたいて細かく刻みます。


かたもち

かたもち

かたもちは、おばあちゃんの知恵の食べ物だと美恵さんはいいます。作るにはすごく手間がかかります。 お餅に海老、黒豆、胡麻、砂糖、塩を入れてつきます。
 

揚げたかたもち

上手くできた「かたもち」は油で揚げたときの形も綺麗になります。サクサクとした食感と香ばしさがたまらない。


笹巻き

灰汁(あく)巻きとも言われ、笹で巻くのが特徴です。


ばばちゃんたちの味を繋いでいきたい

美恵さんは言います。「私の年代は、まだ実は昔のことを伝えられていないのです。 やっと仕事が終わりこれからという時期なんです。今、80代くらいのばばちゃんたちに頼んで、昔からの味を教えてもらっています。 目分量でしかつくらないばばちゃんたちの味を感覚だけで受け継ぐのではなくきちんとレシピを残していきたいのです。 ばばちゃんたちの食べ物は、本当に手間がかかっていますから。」


蝋燭能

蝋燭能

2月第4土曜日に春日神社で行われます。

蝋燭能でふるまわれる料理

棒鱈と大根煮、凍み豆腐とごぼう、青豆とぜんまい煮、干し柿と大根なます、つや姫おにぎりとお漬物、甘酒。


 

 

(文・写真 俵谷敦子)

凍み豆腐

黒川の名物。固めに作った豆腐を串に刺して炙り、凍らせたものです。
上座と下座ででは食べ方に違いがあります。上座では、凍み豆腐を温めて山椒、胡桃などで作ったタレにつけて食べるのに対して、下座では冷たいままの凍み豆腐に、酒と醤油で味付けして山椒をきかせた熱い汁をかけて食べます。いずれの座でも、豆腐には茹でた牛蒡が添えられます。(写真は王祇祭で振る舞われる当屋豆腐です。左が下座、右が上座)


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食べれるところ  宿処 権太郎
 
山形県鶴岡市黒川字上の山60
 
TEL 0235-57-3865

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