鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.036 〜和からし〜
 
有限会社 月山パイロットファーム 相馬大さん

 高原の風が気持ちいい5月、月山パイロットファームの相馬大さんに、在来の和からしのお話をお聞きしました。在来の和からしは、現在日本国内でも生産しているところがごく少なく、希少なものですが、種を受け渡しながら大切に育てています。

からしの畑と月山を背景に

 和からしという作物がどんなものかと聞かれ、すぐに思い浮かぶ人はどのくらいいるのでしょう。月山パイロットファームでは、藤島の田んぼの中に一か所と、月山高原に一か所の二つの場所で庄内在来の和からしの栽培を行っています。




風になびく和からしの草原

まずはじめに、田んぼの中にある畑に連れて行っていただきました。鳥海山を望みながら、背の高いほうきのような植物がざわざわと風にゆれていました。近づいてよく見てみると、上向きにたくさんのマメのさやのようなものがついていて、開いてみると緑色の直径1㎜程の種子が規則正しく並んでいます。
  
取材に行ったタイミングは、花が受粉してこれから種子を成熟させ大きくなっていく頃でした。取材に行った日は、風の強い日が続いた後だったため、藤島の畑にはすでに花はありませんでした。「こっちはもう終わっちゃったけど山の畑は花が咲いているころですよ。次は山に行ってみましょう~!」と案内して下さったのは月山パイロットファームの相馬佳苗さん。
  
「和からしの日本国内の生産はほぼゼロに近く、昔はあちこちに在来もあったらしいけれど、今ではほとんどカナダからの輸入が占めているんですよ。庄内で生産しているのは、自家用にはもしかしたらもう少しあるかもしれないけれど、うちと、庄内町の生産者さんのもう一軒だけです。からしもそれから一緒に作る民田茄子も気難しい作物なのよ、もっと詳しい話は社長からも聞いてください~。」華やかでさっぱりとした佳苗さんは話をしているだけでも今日の天気のように気持ちいい。



黄色がかわいらしいからしの花

初夏を告げる雪解けの月山と黄色のお花畑は、これからの大変な作業を忘れさせてくれる

山の畑に到着すると、黄色のお花畑が目に飛び込んできました。社長の相馬大さんは先に着いていました。月山高原の、とても眺めのいいところに位置している畑は、月山とからしのお花畑を一緒に楽しめる最高のロケーションです。



挽きたてのからしの粉

「うちは、民田茄子を作っていて、それをからし漬けにする用に毎年栽培しています。なので、和からし単独での販売はしていないのですが、今から約35年前、親の代の時に親戚の家にあったからしのたねを譲ってもらい、栽培を始めました。」一般的な市販のからしは、実はほぼカナダ産で、マスタードオイルをとったあとに残った固体の部分を粉末にして、粉のからしとチューブになっています。本来のからしが持つ複雑な味は粒全体を味わってこそ出るものだといいます。その昔、在来のからしは自家用にどこの家でも作っていたんだけれど、刈り取って干す作業や、タイミングの難しさなど、手間のかかり具合も相当な割に収量も少ないため、段々植える人も減ったとのこと。25a弱の山の畑で、採れるのは100kgほどの収量だそう。予想以上に少なくて驚きです。


案内して下さった佳苗さん

「刈取りの時期が特に大変。梅雨で蒸すし、暑いなか一切風の通らない背丈をこえるからしを手で刈っていく。天気予報とにらめっこしながら、作業の日を見極めます。全体として今年は例年よりも1週間ほど早いです。畑を平地と山の2か所にしているのは、条件の悪い年に全滅することがあるからです。自分のところで種を取っていますからね。リスクをなるべく減らしています。」
 
からしの畑は、6月中下旬に刈り取りを終えたら、その後青大豆の畑になるそうです。次々に作物が変わるんですね、と言うと「農家は、やっぱり百姓だと思いますよ。作れるものは自分のところで作る。それがいちばん基本にあります。月山パイロットファームではできるだけ資材を使わないで持続的に農業生産することを目指した『低投入持続型農法』の確立を目指しています。それに、民田茄子のからし漬も、着色料、保存料などの添加物は一切使用していません。そのため賞味期限が短く冷蔵保存が前提となり、見た目も鮮やかではありませんが、安全と自然な美味しさにこだわって作っています。」大さんの信念とやさしさを感じます。
 
その視線の先には、黄色の花畑と月山の雄大な姿がありました。

種の様子を見る

和からしと地域のくらし

最後に、からしにまつわる少し前の話を聞きたいと思い、月山パイロットファームの理事で、大さんのご両親でもある相馬一広さん、恵子さんにお話を聞いてみました。
 
恵子さんの実家は今の庄内町です。そちらの親戚の家にからしの種はありました。小さいころはどの家でもからしを自家用に作っていて、特に、最上川に近い地域は米だけでは食べていくのが大変だったため、色々なものを作っていたそうです。

刈り取り作業


手作業で叩き種を出す


選別も何度も行う



広げて種子乾燥させる

自家用のものは家で石うすでひいていましたが、青きな粉で有名な庄内町の跡地区では、きな粉だけでなく様々な粉ひきの技術を持っていたので、からしの量の多いときは跡で粉にしていたという話をしてくれました。今、庄内で出回っている粉からしは跡でひいています。
  
「からし漬は砂糖を使うし、からしの保存効果があるから、高級で特別なとき、ハレの日の食べ物なのよ。おくづけといって、でっかいキュウリをうんとしょっぱくからし漬けにして、ピタッと平らなのを正月にカリカリと食べたのよ、ごちそうだったわぁ。」「普段食べるのは塩漬けかみそ漬けだなやの、漬けてとり忘れた漬物が味噌汁に入っているのが嫌だったなぁ」とお2人は笑いながら教えてくれました。


今回からしと言う作物についての取材でしたが、加工品や地域のつながりの話を聞くことができ、一つの作物から広がっていくストーリーを大切にしていきたいと感じました。
 
手間はかかるけれど育てるのは簡単だよ、と教えていただいたので、今度の秋にからしをまいてみたいな、と思います。
 
 
(文・写真:稲田瑛乃)

在来の和からし

庄内地方のからし漬には欠かせないからし。日本でもからし生産地は少ない。手作業での収穫調整作業で作られている。搾油せずにそのまま粉にしているため、ツンとした辛さだけではなく苦味やえぐみを含めた和がらし本来の風味が味わえる。

花の時期

5月中旬

収穫時期

6月中下旬


問合わせ

有限会社 月山パイロットファーム
〒999-7634
山形県鶴岡市三和字堂地60番地



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