鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.041 〜にんじん〜
 
野菜農場叶野 叶野幸喜さん(鶴岡市東堀越)

藤島の集落の中から少し離れた山の道を進み、森が深くなってきたな、と思うと、いきなり空が目の前に広がり、畑が前面に見えてきます。今にも山から動物たちが出てきそうな雰囲気。野菜専門の農家は少ない中で、ニンジンやジャガイモを中心に農協のほか給食センターやレストランに直接販売している野菜農場叶野さん。今回は、息子さんの幸喜さんに家族経営で野菜づくりに向き合う野菜農場叶野さんのお話を高原の畑の中でお聞きしました。


取材の日、羽黒の大鳥居の近くにある約束の場所に行くと、軽トラックで幸喜さんと幸喜さんのお母さんが顔を出しました。あいさつもそこそこに、畑に向かうことに。こんなに山に入っていって畑があるのかとびっくりするような場所にあります。
  
叶野幸喜さんは現在35歳で、ご両親と共に日々畑の野菜たちと向き合っています。
叶野農場では20haほどの畑でジャガイモ、ニンジン、赤かぶ、アスパラガス、枝豆、ウドなど様々な品目を栽培していますが、実は昔から今のような体制だったわけではなく、一緒に働く親父さんの代から野菜農家として大きくなったのだそうです。



高原に広がる人参畑

昭和60年は全国の葉タバコ生産農家は7万8千653戸だったのに対し、平成23年では1万801戸にまで減少し、現在山形県内でも約250戸。時代の変化と共に、その時に求められる作物に入れ替わってきました。
  
叶野農場では、栽培作物を葉タバコから野菜へ転換し、ジャガイモからはじめたのだそうです。幸喜さんは、高校を卒業して、北海道の農家へ修業に行ったのですが、高校時代には、自分が農業に従事するとは思っていませんでした。しかしながら、会社員のような仕事ではなく、自分で何かやっていきたい気持ちは強かったと言います。

採れたての人参

「うちはそんなに大きい農家でもなかったから、1haくらいで機械も何もないところからスタートしたなやの。今も3人でやってるけど、機械をうまく使いながら、うまいくやってる。 一つの機械でいくつもの作業ができたり、別の作物でも同じ機械使ったり、少ない人数でできる工夫しながらやってんなだ。人の手も重要だけど、機械はちゃんと使えば文句言わないし、言うこと聞くから。」と冗談ぽく笑います。
  
周辺の藤島や羽黒の農家では、昔は共同で赤かぶ栽培をしたり、共同で機械を購入し使っていたこともあったそうです。 忙しいときには、集落の女性たちに仕事をしてもらっています。彼女たちは通称「東堀越ガールズ」。赤かぶの収穫の際にはにぎやかにおしゃべりしながら、作業します。
平均年齢は70代。時には機械を使い少人数で工夫しながら、時には地域のいつもの顔と作業しながら、叶野農場は野菜を作っています。



機械も人の手もうまく工夫してつかう

農機具は一台何役もこなす

叶野さんの農場は、比較的山間にあり、高原のような気候です。朝露や、寒暖の差は根菜類に向いており、濃い味の野菜ができると言います。12月中旬には雪で畑に来られなくなるそうですが、冬は倉庫に保管しておいた野菜を、産直や取引先、藤島と鶴岡の給食センターにも野菜を出荷しています。
  
 
現在、中心として作っているのは、ジャガイモ6品種、ニンジン2~3品種だそうです。「同じニンジンつくるよりだったら、当たり前だけどより栄養が高くて、甘味があって旨い、体にいいものを作りたい。これは親父から常に言われてきたことだから。間違いないものをたべてもらいでなやの。」

マルシェで直接販売をする幸喜さん

畑をいろんな人に見に来てもらえば面白い

畑に人が来ることも多いそうですが、どのような方が来るのかを聞いてみたところ、地元の人よりも、県外の人が多いそうです。関東の料理人たちがツアーで来たり、小学生の掘り取り体験したり、多いときは100人ほど来ることもあったそう。子どもたちの農作業体験は特に大事だという幸喜さん。
  
「親が知らないことは子どもも知らない。子どもたちは楽しそうに作業するんだけど、親がそれ以上に真剣になったりして、でもそれって一番大事なことなんねかなと思う。親が一生懸命だと子どもも一生懸命になる。ジャガイモって土の中になるんですか、って言われたこともあるし(笑)、実際の作業をすると食べ物のことだから本当のことが見えることもある。農家によってはいろんな意見があるけど、畑はもっといろんな人に来てもらってもいいなと思う。」
  
生産者ツアーで料理人が畑を見に来たことで、今でも首都圏や九州のレストランともつながっていると言います。

実は、幸喜さんは農業を強制的に始めたわけでもないし、逆に農家が面白いからやっているという気持ではなかったのだそうです。しかしながら、続けていく中で、自分で顔の見えるお客さんに売るようになり、直接反応があると面白くなってきたと言います。「いろんな人からイベントとかで来たり、買って、地元の人がたの中で知ってる人増やしで行けたらと思うなや。」

うちのジャガイモ・ニンジン・玉ねぎでカレーを作ってほしい

 今、玉ねぎにも力を入れています。地物で大きくやっているところは少ないそうです。玉ねぎは、夏ごろ種まきして、冬をこえて6月に収穫。
 
「うちは直まきでやってるあんけど、毎年やって、毎年失敗してる。でも今年はうまく行きそう。農業って、一年一年のサイクルだはけ、10年やっても10回目、1年ごと玉ねぎならちょっとずつ玉がおっきくなる。もしぇよの。ジャガイモとニンジンと玉ねぎつくって、うちの野菜でカレー作るって面白いと思いませんか。」
 
食卓にいつでも出てくる野菜を作って、地元産の野菜で地域の家庭の食卓が作られるのが夢だと言います。
 
野菜は米と違って連作障害があったり、同じようにしても同じものができない。補助も米に比べると少ない。思ったとおりにならない中、工夫して理想に近づけていけるかなど作り出す面白さがあると言います。
 
「野菜は特に、土づくりが大事。土は野菜の家。家をどれだけうまいく作れるかがもしぇところだなやの。」

3人のお子さんのいる幸喜さん。子どもたちは大きくなって昔ほどは畑に来なくなったと言いますが、誇りを持って面白そうに野菜を育てるカッコイイお父さんの背中を見ながら、日々かわいがって育てられた野菜たちを食べているだけで、思いや愛情は受け取っているんだろうな、と感じます。
 
当たり前のおいしさを身近で提供してくれる叶野さんのような農家さんが、身近にいるだけでこの地域には豊かさがあるといえるのだと心に刻まれました。


(文・写真:稲田瑛乃)

叶野さんのにんじん

 秋からだんだんとれ始めるニンジン。
特に冬の時期の人参やじゃがいもは、外気の寒さによって甘味がでて美味い時期なのだそう。

メッセージ

食べた人が健康になれますように!!一人でも多くの人に食べてもらって感動してもらえるように!!と日々思い込めながら栽培しています。
 
月山の麓に位置する高原地帯にあります。この気候風土豊かな環境は、野菜作りにピッタリです!土壌の赤土も美味しく育んでくれます。

お問合せ

野菜農場 叶野
住所 鶴岡市東堀越五輪沢田263
電話番号 0235-64-3578
 

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