鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.040 〜焼畑カブ(温海カブ)〜
 
山形大学農学部フィールド科学センター上名川演習林(鶴岡市上名川)

鶴岡の在来作物の中で、知名度の高いものの一つに「焼畑カブ」があります。
地域ごとにもいろいろな焼畑カブがありますが、今回は、新しい切り口で焼畑の取り組みをしている山形大学農学部フィールド科学センター上名川演習林(以下演習林)を訪ねました。森林や林業を学ぶ学生の研究や調査の場として利用されている旧朝日村上名川にある演習林では11年前から焼畑を実施しています。どのような思いで続けてきたのか、職員の方にお話をお伺いしました。


左から、新井大輔さん、飯塚禎明さん、伊藤健吾さん

「11年前に、研究の一環ではじめて焼畑を実施しました。その時は、まだカブを育てていたわけではなく、スギを伐採した後に焼畑をして作物を植えるという伝統農法のやり方を意識したブナやだだちゃ豆を栽培するものでした。このころから、種やさんから温海カブの種子を購入し仲間で食べる用として趣味程度に栽培はしていました。2年くらいたったころに、研究で本格的に焼畑カブを始めたんですよ。」
  
伝統的な焼畑は、林業と密接に関わっています。山形大学農学部には森林について学ぶコースがあり、演習林はその研究のフィールドなのであくまでも中心は林業ですが、副産物としてカブを生産しています。演習林の技術職員の一人、新井大輔さんに焼畑の基本的な流れをお聞きしました。



とったばかりの温海カブ

伝統的な焼畑は、スギを伐採した後の斜面に伐ったスギの枝条(木の枝)を活用し、燃えやすいように並べ、そこに火入れをします。山の表面を均一に焼き、雑木や草本を燃やし、そこにまずカブの種子を蒔き、人によって異なりますが、何年か作物を栽培して新しいスギの木を植え付けをします。
演習林ではカブの生産は1年だけで、その次の年はスギを植栽しています。

今年は十分乾燥していたのでよく燃えたそう

 焼畑は、次にスギを植えるための地拵えの要素が大きく、焼畑をした土地は雑草などが育ちにくいので、木がまだ若いころに特に重要な草刈り作業の軽減に一役買うと言います。

※地拵え(じごしらえ)とは:土地を荒廃させないような配慮をしつつ、苗木の植え付けを容易にし、その後の下刈をしやすくするための作業

斜面を見下ろす

今年の焼畑はかなりうまくいったそうです。ただでさえ天気次第の部分が多い農業ですが、焼畑は火を入れるタイミングや、生の枝条をいかに乾燥させるかというところで、火を入れるまでが本当に天気予報とにらめっこの作業なのです。それが、おおむね予定通りに進んだということで、狙った日(今年は8月6日)に火入れができたと、満足そうな様子でした。
 
今年の焼畑地の面積は0.2ha、傾斜は35°くらいある102年生スギの人工林でした。伐採は春、3月中旬頃から実施し、約200?のスギを搬出しました。5月~6月に伐採した枝ではお盆のころの火入れに枝の乾燥が間に合わないので、カレンダー通りに進めるかどうかというのが大きいポイントになるそうです。火入れの時期も、お盆よりも前だと朝露できちんと乾燥された状態にならないので、早くても遅くても思うようにいかないというのが難しさであり面白さでもあると言います。
 
ちなみの今年の出荷量は560㎏。なかなか量は安定しないと言いますが、多い年は1tほど出荷した年もあったそうです。

準生産者という感じですが、できることはたくさんある

多くの人が関わっている

「実際に10年続けてみて、どの作業も本当に大変で時間も労力もかかります。専業でやっている方は本当にすごいと思いますね。うちでは、職員3名のほかに、農学部に通う学生をアルバイトで雇って、全部で40名くらいで作業しています。数名で作業するとなると想像もつきません。大学機関で機械と土地と時間があるからできる部分はあるかもしれません。大学だからこその意義もあります。個人の土地ではなく、ある程度のオフィシャルな機関なのでイベントがしやすいですね。ツアーや体験、見学など学びの要素を多くすることが可能です。PRにも使えますし。」


今年の焼き畑の様子

研究のフィールドとして
 
山形大学は他県から来ている学生も多いので、この土地らしさを知る場になるのではと考えているそうです。専門でやっている方たちと比べると、収量や経済的な面では劣るかもしれませんが、研究だけでなく、地域に根差した演習林を目指しているので、焼畑カブを続ける意義は大きいのではないでしょうか。また、人里離れた山間部でもあるため、種子が混ざることがないのも重要なポイントだそうです。アブラナ科は交雑しやすいので、たとえばキャベツなどが近くにあると純粋なカブの種子が守れなくこともあるそうです。遺伝子の保全の視点でも、研究の視点でもいいことがありそうです。
 
一般の人が演習林の焼畑カブを手に入れられるのかお聞きしたところ、山形大学農学部では鶴岡市若葉町にある大学の敷地内で、春から秋にかけて毎週木曜日実施している農場市を開催しており、収穫が10月から始まるのでそのころからなら農場市でも手に入れることができるそうです。注文があれば、届けることも可能だそう。地域の方でも毎年買う方がいて、中には、カブ漬けにして持ってきてくれる方もいるとのこと。そうやって地域らしい食材からまたつながりが広がっていくんですね。
 


大学構内で開催の農場市

地域とのつながりやこれからのこと

「最初は、職場で取り組んでいるからやっているというのが入口ではあるけれど、ここまでやっているからには続けていきたいです。各地の焼畑の話を聞いても、労働付加や経済面から見ても後継者がどんどん増えるという業界でもないので、世代的に若い自分たちが、せめて細々とやっていくことで伝統の技術をなくさないで受け継いでいけたらと思います。なんにせよ、続けることが大事です。ただ、まだまだ焼き畑については勉強不足のところもたくさんあります。地域の実践者の方から学ぶ機会もまだ少ないですし。加工やレシピ考案について話題にはあがりますが、そこまで手が回らないのが現状です。演習林のようなハードルの低いところを入口にして、これから興味を持ってくれる人が増えて、広がっていくといいと思っています。」

種まきの様子

5年ほど前から演習林産のカブの収量が安定した時には、漬物の本長さんと取引もあるそうです。試行錯誤の中で、地域内外の手を借りながら焼き畑などに取り組んでいるそうです。山の中で、木材を生産するだけではなく、林業・農業の循環の中で土地を多面的に利用する事を考えていきたい、とおっしゃる新井さん。

 新井さんは大学での焼畑カブの生産について、準生産者、という言い方をしていました。在来の品種を守ったり、伝統の農法を受け継いでいくためにはやり方は1つではない、というところを見せていただいたように思います。純粋に生産をする人もいれば、公益的な部分を重視するところや、研究に力を入れるところなど、色々な切り口から様々な人が関わっていくことが必要になってくる時代が来るのかもしれません。
 
 
 
(文・写真:稲田瑛乃)


焼畑カブ(温海カブ)

時期:10月中旬~降雪まで
大きさ:直径8~10cm
傘径5-10㎝
柄長3-5㎝
柄径5-10mm
用途:甘酢漬け サラダ 浅漬け et

メッセージ

当演習林では、主に80~90年生のスギ林を、年1~2回皆伐しています。 その伐採跡地にて焼畑を行い、温海カブを栽培しております。
山形県鶴岡市温海地域で行われている伝統的な焼畑林業の手法を用い焼畑を行い、栽培しています。 そのため、赤みも鮮やかで、味も好評を頂いております!

お問合せ

山形大学農学部附属
やまがたフィールド科学センター
流域保全部門(演習林)
 
[流域保全部門本部]
〒997-8555 山形県鶴岡市若葉町1-23
TEL:0235-28-2962 FAX:0235-28-2963
 
[上名川演習林]
〒997-0405 山形県鶴岡市上名川字早田川10
TEL・FAX:0235-53-2755


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